novelmber 2024

 喉が渇く。狂おしいほどに。
 体が渇ききっているのがわかる。口の中もカラカラで、なのにもう俺が飲めるものはない。この地球上に、もう俺が口にできるものは。
「これは復讐よ」
 そう微笑み、陽の光に焼かれた彼女を思い出す。あれが、最後の太陽だった。
 地球が氷河期に入り、人類がどんどんと数を減らす中、彼女たち吸血鬼一族も滅亡の一途を辿っていた。誇り高い彼らは、血に飢えながら苦しみ続けるよりも、潔く日光に身を晒すことを選んだ。
 そう、彼らは誇り高かったのだ。自らの求愛を断った人間に対して、こんな形で復讐しようとするくらいに。
 俺が悪かった。彼女の誘いを断りさえしなければ、あのとき一緒に消えてなくなれたかもしれないのに。
 人間はいない。太陽も出ない。
 降り続ける雪とますます凍てつく風の中で、俺は永遠に癒えない渇きを抱えてうずくまった。
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