novelmber 2024

 掌の上で転がしていた、暗い色の包み紙をペリペリ開くと、銀色に輝く丸い星が現れた。
 月だ。
 口に入れると糖衣の甘さが広がって、その後で爽やかな、きらめく光のような味に行き当たる。カリッと噛んでみると、中からは、いつかどこかで嗅いだことのある花の香りが立ちのぼる。それを味わううちに、いつのまにか月は、しゅわしゅわと消えている。
 さて次は、と箱から取り出し包み紙を開くと出てきたのは、美しい青い星だった。
 地球だ。ひとくちで食べてしまうには惜しい。
 私は、つぶさにその表面を観察した。球面の大部分を占めている海水、その中に住まうユニークな面々、陸地や空を飛び交う多種多様な生物たち。
 いただきます。
 そっと囁いて、私はそれを舌に乗せた。
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