光鍋パは終わらない

 それからどのような恐ろしい場面が展開されたかは思い出したくないので割愛するが、諸々の魔術儀式めいたあれこれの後、大きな家の各階に設置されたトイレに感謝しつつメンバーが出入りを繰り返す中、ぼくは棚沢の介抱をしていた。結局、棚沢はファーストインパクトに耐えられず気を失い、結果的には幸いなことに、鍋の中身が空になるころ目を覚ましたのだった。
「祝子先輩、光鍋は……」
「もう終わったよ、安心していいよ」
 誰のものかもわからないベッドに寝かせられていた棚沢は半身を起こし、ため息をついた。
「畔先輩の様子はどうですか」
 畔先輩は絶好調だった。光鍋を楽しんでいるのかぼくたちが苦しむ様を楽しんでいるのかはわからないが、終始にこにこと笑顔で、頼んでもいない特別トッピングやら何やら、世話を焼いてくれさえした。
 その様子を黙って聞いていた棚沢はベッドから降りた。
「トイレに行ってきます。居間に行く勇気はないので戻ってきますから、祝子先輩、待っててくださいね」
 そう言って、行ってしまった。
 閉まったドアを見つめて、何分か経ったろうか。そう言えばデザートのアイスだけ、棚沢の分が残っていたのを思い出した。持ってきてやろう。
 ぼくも部屋を出た。
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