黄金蝶を追って

 全編を通して描かれているのは、人の想いの強さとその力。人が何かを強く思うことで引き起こされる不思議な出来事が中心的なテーマだと感じた。ただ、ひょっとすると、この著者の関心はそこからまた動いている可能性がある。収録作では最新である「星は沈まない」ではそこまで強い思いを感じなかったし、書き下ろしである「黄金蝶を追って」や「シュン=カン」も、個人の想いの強さを描いてはいるがむしろ人と人との関係性にフォーカスが当てられているように感じたためだ。確かにファンタジックな着想はあるものの、それを人が引き起こしている、というところからは離れてきているのかもしれない。
 自分が特に気に入ったのは「星は沈まない」と「ハミングバード」。特に「ハミングバード」は、気ままなひとり暮らしと自宅に対する愛情という点で、非常に共感できた。
 ただ多少気になる点は、人物描写が古臭いのと、ステレオタイプである点だが、これは短編という制約上仕方ないところがあるのかもしれない。また、人物同士の関係性も、短編である程度オチをつけることを考えると仕方ないのだが、やはりステレオタイプに感じてしまう。途中差し挟まった人物描写も、活かされきっていないように思った。
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