38話 ある天使の肖像
「‥‥‥故人は我が国の芸術の発展に多大なる寄与をし、その功績は国外にも影響を及ぼし‥‥‥」
新聞で式を知り、慌てて駆け付けた墓地では、葬儀の真っ最中だった。よく晴れた綺麗な夏の日で、彼が教会に通って仕事をしていた日々を思い出す。葬儀を執り行う神父の言葉が終わり、参列者が彼の棺に花を投げ入れた。棺が閉じられ、彼の魂が安らかでいられるようにと、その場の全員が祈りを捧げる。
式が終わり、ひっそりと立ち去ろうとした私に、声を掛けた男がいた。
「失礼ですが、もしかして貴方は『神父様』の甥御様ではありませんか」
男は画家の弟子で、彼から私の肖像画を見せられ、何度も思い出話を聞かされたのだと話してくれた。
「本当に、あの絵に描かれた『神父様』そっくりでいらっしゃるので、絶対そうだと思いました」
男は笑い、もし時間があるなら画家のアトリエに一緒に来てくれないかと言った。葬儀のために休みを取っていたので承諾し、ついて行った先に、私の肖像画があった。
「先生は、この絵を生涯にわたって大切にしていました。毎晩、眺めて、祈りを捧げているのだと仰っていました。そんな風に大切にしていた作品なので弟子の私が保存しておくべきかとも思ったのですが、やはり、これはモデルとなった方にお渡しするのが一番だと、今日お会いできて思ったのです。どうか、持ち帰って、『神父様』にお渡しいただけないでしょうか」
男は頭を下げる。私に、断る理由などはなかった。嵩の割に軽い絵を布にくるみ、私はそれを持って帰った。
新聞で式を知り、慌てて駆け付けた墓地では、葬儀の真っ最中だった。よく晴れた綺麗な夏の日で、彼が教会に通って仕事をしていた日々を思い出す。葬儀を執り行う神父の言葉が終わり、参列者が彼の棺に花を投げ入れた。棺が閉じられ、彼の魂が安らかでいられるようにと、その場の全員が祈りを捧げる。
式が終わり、ひっそりと立ち去ろうとした私に、声を掛けた男がいた。
「失礼ですが、もしかして貴方は『神父様』の甥御様ではありませんか」
男は画家の弟子で、彼から私の肖像画を見せられ、何度も思い出話を聞かされたのだと話してくれた。
「本当に、あの絵に描かれた『神父様』そっくりでいらっしゃるので、絶対そうだと思いました」
男は笑い、もし時間があるなら画家のアトリエに一緒に来てくれないかと言った。葬儀のために休みを取っていたので承諾し、ついて行った先に、私の肖像画があった。
「先生は、この絵を生涯にわたって大切にしていました。毎晩、眺めて、祈りを捧げているのだと仰っていました。そんな風に大切にしていた作品なので弟子の私が保存しておくべきかとも思ったのですが、やはり、これはモデルとなった方にお渡しするのが一番だと、今日お会いできて思ったのです。どうか、持ち帰って、『神父様』にお渡しいただけないでしょうか」
男は頭を下げる。私に、断る理由などはなかった。嵩の割に軽い絵を布にくるみ、私はそれを持って帰った。