196話 仮面舞踏会

 夜の闇に紛れて何かが動いた気がして、それが小さな黒猫だと気がついた時には、前方をよく見ていない車が、可愛らしい小さな体目掛けて猛進しているところだった。どうやら黒猫は、同じく黒いカラスに追い立てられて車道へ出てしまったらしい。
「危ない!」
 命を懸けて猫を救うなんてよくある小説じみたことが私の人生に起こるなんてありえないと思っていたけれど、案外、何でも起こるものだ。
 黒猫を抱き上げて歩道に放り投げて、私自身は迫り来る車のヘッドライトと、その向こうで微かに見える、引き攣った運転手の顔を見た。まだ十七年しか生きてないのにな、と思ったことを鮮明に覚えている。
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