178話 ある使い魔のお使い
悪魔であるお兄様から頼まれるお仕事、つまり使い魔としてのお仕事は、大半がお家の掃除や買い物といった、ごく普通の家事のお手伝いだ。と言っても、掃除する場所は高層マンションの上層階である居住スペースから謎の空間を経由してたどり着く地下書庫や、魔法を使って繋がっている使い魔仲間たちのお部屋なので、ごく普通と言うのもちょっと語弊があるけれど。
ただ、時々、買い物ではないお使いを頼まれる時がある。お兄様がお仕事で使う書類や道具を人間のお仲間さんに渡しに行ったり、どこかに置いて来るように言われたり。何だかスパイ映画の主人公にでもなったような気分になるけれど、実際、お兄様は悪事に加担しているわけで、それを恋人である天使様以外の天使様に見つかったり止められたりしないように、私に頼んでいるわけで……実質、私はスパイなのかもしれない。
だから、お兄様に紙袋を渡された時も、今日もスパイになるのね、と心の中で思った。
「なんだ、ダイアナ。変な顔して」
「これは真面目な顔よ、お兄様。お兄様のお仕事を、しっかりお手伝いしなきゃって思ったの」
お兄様は「それはいい心がけだ」と頷いて、私が受け取った紙袋を見た。
「そいつには衝撃を与えるな。雪道で滑って転ぶなんて厳禁だ。滑り止めの魔法でも使っとけ。それと、ひっくり返すな。常に地面と平行を保て」
「わかったわ」
「それと……」
お兄様は、紙袋から私に視線を移した。
ただ、時々、買い物ではないお使いを頼まれる時がある。お兄様がお仕事で使う書類や道具を人間のお仲間さんに渡しに行ったり、どこかに置いて来るように言われたり。何だかスパイ映画の主人公にでもなったような気分になるけれど、実際、お兄様は悪事に加担しているわけで、それを恋人である天使様以外の天使様に見つかったり止められたりしないように、私に頼んでいるわけで……実質、私はスパイなのかもしれない。
だから、お兄様に紙袋を渡された時も、今日もスパイになるのね、と心の中で思った。
「なんだ、ダイアナ。変な顔して」
「これは真面目な顔よ、お兄様。お兄様のお仕事を、しっかりお手伝いしなきゃって思ったの」
お兄様は「それはいい心がけだ」と頷いて、私が受け取った紙袋を見た。
「そいつには衝撃を与えるな。雪道で滑って転ぶなんて厳禁だ。滑り止めの魔法でも使っとけ。それと、ひっくり返すな。常に地面と平行を保て」
「わかったわ」
「それと……」
お兄様は、紙袋から私に視線を移した。