163話 good idea

「おや。玄関ドアにこんな可愛いキーフックを付けてくれたのは誰かな?」
 家を出がけにパパが尋ね、同じ職場に向かうママが靴を履きながら「ダイアナよ」と答える。お見送りに立っていた私は「ダイアナよ!」と復唱した。
 パパが家の鍵を持って出かけるのを忘れがちなので、家の庭から拾ってきた木の枝を使って作り、お手伝いさんに頼んでドアに付けてもらったのだった。
「そうか、そうか。これはまた素敵な思いつきだな。ここに鍵をかけておけば、家を出るときに忘れず済む」
「本当に、ダイアナはいつも素敵なことを思いつくわね」
 二人がにっこりと笑い、私の頭を撫でてくれる。
 私はその手の温度を、夢から覚めても思い出すことができた。

「ん? これ……」
 仕事から帰って来たお兄様が、壁に掛けておいたメッセージボードに目をやった。白い紙に透明のラップフィルムを貼り付けて、可愛いビーズやリボンで飾りつけた、私のお手製だ。水性の黒いペンを使えば書いたり消したりできるし、裏の紙はマグネットボードなので、ペンを扱えない魔物でもアルファベットや記号のマグネットを使ってメッセージを残せるという、工夫も加えてある。
「ダイアナが作ったのか?」
「そうよ! この家には私やお兄様だけじゃなくて、バクや他の多くの使い魔たちがいるでしょう。何か用事で出かけるとか伝えたいことがあったら、ここに残しておくと便利じゃないかと思って」
 お兄様は「ふうん」と相槌を打って、しげしげとボードを見た。
「俺たちは魔法で通信できるが、同時に複数の相手に同じ内容を通信するのが不得手な奴もいる。電子機器を扱えない奴もいる。確かに、これはいいアイディアかもしれんな」
 どこから取り出したのか、黒い羽をボードの飾りに追加して、お兄様は笑った。
「お前は面白いことを思いつくよな」
「そうでしょう」
 私は胸を張った。
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