148話 天使のセンス
ついこの間までとにかく忙しそうにしていたお兄様が「今週末は海に行くぞ」と言うので、今日は新しい浮き輪を買いにお店に行った。
天使様と。
「ダイアナちゃん、どんな浮き輪が欲しい?」
天使様はとても楽しそう。私のよりきらめくふわふわの金髪を揺らしながら、商品の陳列棚の間をスキップするように歩く。教会で神父様として働いている時は神々しいほどにお美しいのに、飾られている商品のひとつひとつに歓声を上げる様子は、まるで子供みたいで微笑ましい。
「天使様。私の浮き輪はお兄様がくれたお小遣いで買えるから大丈夫よ。選ぶのだけ一緒にしてくれれば」
「いやいや、夏までの学業を頑張ったご褒美に、私が買ってあげたいんだ。遠慮しないで」
悪魔であるお兄様とは違って、天使様は人間に混じって真面目にコツコツ働いて、得たお金で暮らしている。無駄な出費をさせてしまうのは申し訳ないのだけど……。
「一緒に海に行くのだから、私が買おうがあいつのお金で買おうが同じようなものだよ」
天使様とお兄様が愛し合っているのはもちろんよく分かっているけれど、それとこれとはだいぶ違う話ではないかしら。
でも、あまり遠慮するのも悪いわよね。
「それじゃあお言葉に甘えようかしら」
「そう来なくっちゃ!」
天使様はぱっと明るい笑顔になり、その足取りはますます軽くなる。私のような使い魔やお兄様と同じく背中に隠しているという、白い羽が見えてしまうのではないかと思うほど軽やかに。
「たくさん可愛いのがあって迷ってしまうよねえ」
「そうね。水面の模様も可愛いし、ピンクのフリルが付いてるのも可愛いわ……」
天使様は私とは違う場所で立ち止まる。
「これなんかとっても可愛いねえ」
見ると、それは大きな、またがって乗るタイプの、バナナの形をしたフロートだった。確かに可愛いと言えば可愛いけれど、私が想定していた物とはだいぶ違う可愛さだ。
「これも可愛い」
次に天使様が立ち止まったのは、三角形のピザの形をしたフロートだった。大きくハッキリした印刷で、チーズやサラミなどのトッピングが描かれている。
「ああ、これもいいねえ!」
そう言ったのは、アボカドの種の部分が輪っかになっているフロートの前でだった。
「天使様はユニークなデザインが好きなの?」
「ユニーク? うん、そうだね。ユニークだし、とっても可愛いなと思うよ! 水面の柄やピンクのフリルと同じように、とてもキュートだ」
「同じように、なのね……」
以前聞いたお兄様の言葉を思い出す。
『天使サマのセンスは独特でな。それも含めて可愛いんだが、しかし結構、度肝を抜かれるぜ』
私は結局ピンクのフリル付きの浮き輪を選んで、天使様には本当にそれでいいのかと何度も念押しされた。
天使様と。
「ダイアナちゃん、どんな浮き輪が欲しい?」
天使様はとても楽しそう。私のよりきらめくふわふわの金髪を揺らしながら、商品の陳列棚の間をスキップするように歩く。教会で神父様として働いている時は神々しいほどにお美しいのに、飾られている商品のひとつひとつに歓声を上げる様子は、まるで子供みたいで微笑ましい。
「天使様。私の浮き輪はお兄様がくれたお小遣いで買えるから大丈夫よ。選ぶのだけ一緒にしてくれれば」
「いやいや、夏までの学業を頑張ったご褒美に、私が買ってあげたいんだ。遠慮しないで」
悪魔であるお兄様とは違って、天使様は人間に混じって真面目にコツコツ働いて、得たお金で暮らしている。無駄な出費をさせてしまうのは申し訳ないのだけど……。
「一緒に海に行くのだから、私が買おうがあいつのお金で買おうが同じようなものだよ」
天使様とお兄様が愛し合っているのはもちろんよく分かっているけれど、それとこれとはだいぶ違う話ではないかしら。
でも、あまり遠慮するのも悪いわよね。
「それじゃあお言葉に甘えようかしら」
「そう来なくっちゃ!」
天使様はぱっと明るい笑顔になり、その足取りはますます軽くなる。私のような使い魔やお兄様と同じく背中に隠しているという、白い羽が見えてしまうのではないかと思うほど軽やかに。
「たくさん可愛いのがあって迷ってしまうよねえ」
「そうね。水面の模様も可愛いし、ピンクのフリルが付いてるのも可愛いわ……」
天使様は私とは違う場所で立ち止まる。
「これなんかとっても可愛いねえ」
見ると、それは大きな、またがって乗るタイプの、バナナの形をしたフロートだった。確かに可愛いと言えば可愛いけれど、私が想定していた物とはだいぶ違う可愛さだ。
「これも可愛い」
次に天使様が立ち止まったのは、三角形のピザの形をしたフロートだった。大きくハッキリした印刷で、チーズやサラミなどのトッピングが描かれている。
「ああ、これもいいねえ!」
そう言ったのは、アボカドの種の部分が輪っかになっているフロートの前でだった。
「天使様はユニークなデザインが好きなの?」
「ユニーク? うん、そうだね。ユニークだし、とっても可愛いなと思うよ! 水面の柄やピンクのフリルと同じように、とてもキュートだ」
「同じように、なのね……」
以前聞いたお兄様の言葉を思い出す。
『天使サマのセンスは独特でな。それも含めて可愛いんだが、しかし結構、度肝を抜かれるぜ』
私は結局ピンクのフリル付きの浮き輪を選んで、天使様には本当にそれでいいのかと何度も念押しされた。