138話 don't sing now!
学校からの帰り道、ちょっと寄り道して自然公園を散歩していたら、急に雨が降ってきた。今まで綺麗に晴れていたのに、何の予兆もなく、本当に突然。慌てて大きな木の下に駆け込んで様子を見ていたら、どこかで聞いたことのあるような歌声が聴こえてきた。
雷のお姉様に初めて会った時に聞いたものと、よく似た旋律だ。
雷のお姉様はとっても格好よくて、歌うことで天候を操れる、お兄様のお友達。会うたびに「あたしの使い魔にならないかい」と誘ってくれるのだけど、私はお兄様の使い魔だから、毎回断っている。
今も、どこか近くにいるのかしら……。
キョロキョロと辺りを見回し、声の聞こえる方へ歩いていくと、思ったより近くに、いた。黒髪で黄色いレインコートを着た……小さな女の子が。
「あら?」
雷のお姉様も黒髪で、いつも黄色い服を身につけているけれど……身長は多分二メートル近くある。でも目の前の女の子の身長は、私の腰くらいまでしかない。てっきり雷のお姉様が歌っているものとばかり思っていたのだけれど……。
「な、なんだよう」
思わずしげしげと見つめてしまった私に、女の子が唇を尖らせた。ボブの黒髪、そして雷の輝きを宿した黒目。とても雷のお姉様に似ているけれど、目が大きくて、格好いいと言うよりも、可愛らしい。
「ごめんなさい。知り合いによく似ていたものだから」
「ふうん」
女の子は頷いて、それから何かに気づいたように、私の顔を見た。
「お前、仲間だな。しかも元人間だろ……ああ、ご主人様が最近熱心にスカウトしてる蛇男の使い魔は、お前か」
蛇男って、お兄様のことかしら。確かにお兄様の瞳には蛇のような瞳孔があるし、舌もスプリットタンだ。でもその呼び方は……クールなお兄様には似合わないわね。
「そう言うあなたは、雷のお姉様の使い魔なのかしら」
「そうだよ! ふふん、この雨だって私が降らせてるんだ」
「凄いわね」
私が感心すると、女の子は頬を緩めた。
「なんなら、お前にも少しだけ、歌を教えてやろうか」
「あら! いいの?」
「簡単ですぐに口ずさめるようなやつを、ひとつだけな」
女の子はニコニコと、一分ほどで歌い切れる小さなメロディを教えてくれた。お礼を言って別れて、それを口ずさみながら帰宅した。お陰で雨の中を歩いたと言うのに、髪も体も衣服もカバンも、どこも濡れていない。
とてもいい歌を教わることができたわね。
そう思いながら部屋でも口ずさんでいたら、お兄様の声だけが、耳に響いてきた。
「ダイアナ! その歌、俺がシャワーを浴びてる時には歌わないでくれ」
雷のお姉様に初めて会った時に聞いたものと、よく似た旋律だ。
雷のお姉様はとっても格好よくて、歌うことで天候を操れる、お兄様のお友達。会うたびに「あたしの使い魔にならないかい」と誘ってくれるのだけど、私はお兄様の使い魔だから、毎回断っている。
今も、どこか近くにいるのかしら……。
キョロキョロと辺りを見回し、声の聞こえる方へ歩いていくと、思ったより近くに、いた。黒髪で黄色いレインコートを着た……小さな女の子が。
「あら?」
雷のお姉様も黒髪で、いつも黄色い服を身につけているけれど……身長は多分二メートル近くある。でも目の前の女の子の身長は、私の腰くらいまでしかない。てっきり雷のお姉様が歌っているものとばかり思っていたのだけれど……。
「な、なんだよう」
思わずしげしげと見つめてしまった私に、女の子が唇を尖らせた。ボブの黒髪、そして雷の輝きを宿した黒目。とても雷のお姉様に似ているけれど、目が大きくて、格好いいと言うよりも、可愛らしい。
「ごめんなさい。知り合いによく似ていたものだから」
「ふうん」
女の子は頷いて、それから何かに気づいたように、私の顔を見た。
「お前、仲間だな。しかも元人間だろ……ああ、ご主人様が最近熱心にスカウトしてる蛇男の使い魔は、お前か」
蛇男って、お兄様のことかしら。確かにお兄様の瞳には蛇のような瞳孔があるし、舌もスプリットタンだ。でもその呼び方は……クールなお兄様には似合わないわね。
「そう言うあなたは、雷のお姉様の使い魔なのかしら」
「そうだよ! ふふん、この雨だって私が降らせてるんだ」
「凄いわね」
私が感心すると、女の子は頬を緩めた。
「なんなら、お前にも少しだけ、歌を教えてやろうか」
「あら! いいの?」
「簡単ですぐに口ずさめるようなやつを、ひとつだけな」
女の子はニコニコと、一分ほどで歌い切れる小さなメロディを教えてくれた。お礼を言って別れて、それを口ずさみながら帰宅した。お陰で雨の中を歩いたと言うのに、髪も体も衣服もカバンも、どこも濡れていない。
とてもいい歌を教わることができたわね。
そう思いながら部屋でも口ずさんでいたら、お兄様の声だけが、耳に響いてきた。
「ダイアナ! その歌、俺がシャワーを浴びてる時には歌わないでくれ」