137話 あなたを映させて
今朝、ダイニングに通じる廊下を歩いていると、見たことのない姿見が置いてあった。まるで絵画を飾る額縁のように立派なフレームに囲まれて、古そうなのに綺麗な鏡面が光っている。
「こんなところに鏡?」
この廊下は、お兄様が所有する色んな空間からダイニングに行く場合、必ず通ることになる長い道で、当然ながら、玄関からも少し距離がある。玄関近くにあるならともかく、こんな所に鏡があっても仕方ないと思うのだけど。
「ああ、あの鏡か。気にするな。少しの間、あそこに置いておくだけだ」
キッチンで料理中のお兄様が、私の疑問にそう答えた。フライパンから美味しそうな匂い。
「でも、なんであんな所に?」
「あの鏡は賑やかな所が好きなんだ。あの廊下なら、俺やお前だけじゃなく、使い魔たちも頻繁に行き来するだろ」
「まあ、それはそうね」
でも、賑やかな所が好きな鏡って……?
不思議に思ったけれど、学校に行ったらそんなことはすっかり忘れてしまって、帰宅してから思い出した。通りがかりに鏡を覗いたら、そこに私は映っていなかった。
代わりにいたのは、コウモリの羽根を生やし、全身黒で統一した、私と同い年くらいの、金髪の女の子だった。目元はサキュバスに似ているし、服装は獏に似ている。髪型はツインテールで、私にそっくり。
お兄様や私、それに他の使い魔たちをひとつに合わせたような彼女は、私をじっと見ている。
なるほど、だから賑やかな所が好きなのね。
私が笑って「ただいま」と手を振ると、女の子は私とそっくり同じ仕草をして、嬉しそうに微笑んだ。
「こんなところに鏡?」
この廊下は、お兄様が所有する色んな空間からダイニングに行く場合、必ず通ることになる長い道で、当然ながら、玄関からも少し距離がある。玄関近くにあるならともかく、こんな所に鏡があっても仕方ないと思うのだけど。
「ああ、あの鏡か。気にするな。少しの間、あそこに置いておくだけだ」
キッチンで料理中のお兄様が、私の疑問にそう答えた。フライパンから美味しそうな匂い。
「でも、なんであんな所に?」
「あの鏡は賑やかな所が好きなんだ。あの廊下なら、俺やお前だけじゃなく、使い魔たちも頻繁に行き来するだろ」
「まあ、それはそうね」
でも、賑やかな所が好きな鏡って……?
不思議に思ったけれど、学校に行ったらそんなことはすっかり忘れてしまって、帰宅してから思い出した。通りがかりに鏡を覗いたら、そこに私は映っていなかった。
代わりにいたのは、コウモリの羽根を生やし、全身黒で統一した、私と同い年くらいの、金髪の女の子だった。目元はサキュバスに似ているし、服装は獏に似ている。髪型はツインテールで、私にそっくり。
お兄様や私、それに他の使い魔たちをひとつに合わせたような彼女は、私をじっと見ている。
なるほど、だから賑やかな所が好きなのね。
私が笑って「ただいま」と手を振ると、女の子は私とそっくり同じ仕草をして、嬉しそうに微笑んだ。