14話 Fly me to the moon.
目が覚めたとき、それまでに感じたことのないほど強い痛みが、胸に走った、ような気がした。勢いよく身を起こすと、その痛みはすぐにどこかへ消えてしまった。窓の外は薄暗く、静かだ。……夜か。
寝台に横たわった記憶などないし、ましてや「眠る」などという不要の行為を、自らしたとは思えない。しかし、頭がすっきりしていて、靄が晴れたようだ。身体も軽い……軽すぎて不安を覚える程に。肉体ではない、精神の……魂の重さが、違う……?
いや……そんな訳の分からないことは、あり得ない。きっと、身体を酷使しすぎたのだ。それに、……そうだ、つい先日、大天使に呼ばれて堕天の話を告げられて……それで受けた衝撃のせいもあるだろう。でも、なぜだろう。もう何の心配も要らないというような気がしてならない。
寝室を出て、キッチンに立つ。何かが噛み合わないような歯がゆさを感じながら、棚から紅茶を取り出す。ふと、見覚えのない小箱が目に留まる。開けて見ると、質の良い茶葉の袋が入っている。
「……こんなもの、買った覚えがないな……誰かに貰ったのだったか」
人間に混じって働く中で、誰かからプレゼントされたものだったかもしれない。そういうことも、時にはある。とりあえず、またの機会に飲もうと思い、箱を閉めようとしたときに、小さなカードが入っていることに気が付く。
取り出して見てみたが、それは完全なる白紙だった。
寝台に横たわった記憶などないし、ましてや「眠る」などという不要の行為を、自らしたとは思えない。しかし、頭がすっきりしていて、靄が晴れたようだ。身体も軽い……軽すぎて不安を覚える程に。肉体ではない、精神の……魂の重さが、違う……?
いや……そんな訳の分からないことは、あり得ない。きっと、身体を酷使しすぎたのだ。それに、……そうだ、つい先日、大天使に呼ばれて堕天の話を告げられて……それで受けた衝撃のせいもあるだろう。でも、なぜだろう。もう何の心配も要らないというような気がしてならない。
寝室を出て、キッチンに立つ。何かが噛み合わないような歯がゆさを感じながら、棚から紅茶を取り出す。ふと、見覚えのない小箱が目に留まる。開けて見ると、質の良い茶葉の袋が入っている。
「……こんなもの、買った覚えがないな……誰かに貰ったのだったか」
人間に混じって働く中で、誰かからプレゼントされたものだったかもしれない。そういうことも、時にはある。とりあえず、またの機会に飲もうと思い、箱を閉めようとしたときに、小さなカードが入っていることに気が付く。
取り出して見てみたが、それは完全なる白紙だった。