130話 彼女は悪魔に向いてない
肝試し、なんて私は嫌い。
幽霊だって、彼らなりの事情を抱えているのだ。悪魔であるお兄様の使い魔になった私には、彼らの姿が見えるし、会話だってできる。彼らは確かに死んでいるけれど、かつては人間だったのだ。中には話が通じないほど変質してしまった悲しい人たちもいるけれど、話が通じる人はほとんど生きている人間と変わらない。ただちょっと、人間にはできないことができるだけ。そして彼らは、私たちにできることが、もうできない。
「今年のハロウィンは北通りのお屋敷で肝試ししようぜ!」
カフェテラスから帰ってきた私たちの耳に飛び込んできたのは、アーサーのそんな言葉だった。この三人組のことはもう無視しようと思っていたのだけど、流石に看過できなかった。
「ちょっと、あなたたち。あのお屋敷は立ち入り禁止になっているはずでしょう。勝手に入っちゃダメなのよ」
私の言葉に、自分の机に寄りかかっていたアーサーが眉を上げた。
「ああ? なんだよ、しゃしゃり出てくんなよ。お前には関係ないだろ」
「関係あるわよ。クラスメイトが悪いことをしようとしていたら止めようとするのが当たり前じゃない」
予想外の反論だったのか、アーサーはちょっと口ごもった。そこへ、三人組の中では頭脳派であるマイクが、あまり頭の良くない援護をした。
「ダイアナ、お前怖いんだろ。怖い話は聞きたくないってことだろ」
ああ、本当にもう。どうしてこんなに会話にならないのかしら。
どうせ私が何を言ったって、彼らを止めることはできない。言うだけは言ったのだから、もういいか。
私が諦めて席に戻ると、彼らは嬉しそうに言った。
「そうか、ダイアナは怖がりなんだな!」
「怖がりダイアナ! 悔しかったら当日、来てみろよな」
勝手に勝ったような雰囲気で囃し立てているけれど、私はもう相手にしなかった。
「ダイアナ、大丈夫?」
後ろの席のマツリカが、声をかけてくれる。アーサーたちのことを心配しているというよりも、私が彼らのしようとしていることに腹を立てているのに気がついているみたいだ。
さすが私の親友、よくわかってる。
「ありがとう、マツリカ。大丈夫よ。アーサーたち、本当にやるつもりなんでしょうね。肝試しなんて……すごく嫌だわ」
「そうね。私も嫌よ」
マツリカが同意してくれるだけで、胸が暖かくなる。私はマツリカにお礼を込めて微笑んで、前に向き直った。
さて、どうしようかしら。
幽霊だって、彼らなりの事情を抱えているのだ。悪魔であるお兄様の使い魔になった私には、彼らの姿が見えるし、会話だってできる。彼らは確かに死んでいるけれど、かつては人間だったのだ。中には話が通じないほど変質してしまった悲しい人たちもいるけれど、話が通じる人はほとんど生きている人間と変わらない。ただちょっと、人間にはできないことができるだけ。そして彼らは、私たちにできることが、もうできない。
「今年のハロウィンは北通りのお屋敷で肝試ししようぜ!」
カフェテラスから帰ってきた私たちの耳に飛び込んできたのは、アーサーのそんな言葉だった。この三人組のことはもう無視しようと思っていたのだけど、流石に看過できなかった。
「ちょっと、あなたたち。あのお屋敷は立ち入り禁止になっているはずでしょう。勝手に入っちゃダメなのよ」
私の言葉に、自分の机に寄りかかっていたアーサーが眉を上げた。
「ああ? なんだよ、しゃしゃり出てくんなよ。お前には関係ないだろ」
「関係あるわよ。クラスメイトが悪いことをしようとしていたら止めようとするのが当たり前じゃない」
予想外の反論だったのか、アーサーはちょっと口ごもった。そこへ、三人組の中では頭脳派であるマイクが、あまり頭の良くない援護をした。
「ダイアナ、お前怖いんだろ。怖い話は聞きたくないってことだろ」
ああ、本当にもう。どうしてこんなに会話にならないのかしら。
どうせ私が何を言ったって、彼らを止めることはできない。言うだけは言ったのだから、もういいか。
私が諦めて席に戻ると、彼らは嬉しそうに言った。
「そうか、ダイアナは怖がりなんだな!」
「怖がりダイアナ! 悔しかったら当日、来てみろよな」
勝手に勝ったような雰囲気で囃し立てているけれど、私はもう相手にしなかった。
「ダイアナ、大丈夫?」
後ろの席のマツリカが、声をかけてくれる。アーサーたちのことを心配しているというよりも、私が彼らのしようとしていることに腹を立てているのに気がついているみたいだ。
さすが私の親友、よくわかってる。
「ありがとう、マツリカ。大丈夫よ。アーサーたち、本当にやるつもりなんでしょうね。肝試しなんて……すごく嫌だわ」
「そうね。私も嫌よ」
マツリカが同意してくれるだけで、胸が暖かくなる。私はマツリカにお礼を込めて微笑んで、前に向き直った。
さて、どうしようかしら。