123話 羽が似合うひと

「天使サマ、プレゼントだ」
 そう言って悪魔から渡されたのは、白いヘッドフォンだった。私のアパートの壁が薄くて、いつも流している音楽の音量を絞っていることに気がついていたのだろう。
「わあ、ありがとう! とっても嬉しいよ。……でも変わったデザインだね?」
 そのヘッドフォンは、耳当ての部分が大きなデフォルメされた羽のデザインになっていた。普段、人間たちが使っているものとはだいぶん変わったデザインのように思われる。
 指摘すると、悪魔は微笑んだ。
「天使サマにはピッタリだろ」
「うん、そうだね」
 確かに、白い羽を持っている私にはぴったりのデザインと言えるだろう。きっとそう思って選んでくれたのに違いない。
 嬉しくて、早速着けて試してみる。かなり性能がいいようで、いつも聴いているクラシック曲の、微細な音色の違いまで聞き取れて、素晴らしい。
「とってもいいよ! 機械内蔵のスピーカーよりも格段に、クリアに聴こえる」
「そいつはよかった」
 悪魔はにこにこと目を細めた。
「それじゃあ大切に使わせてもらうね」
 言いながら外そうとすると、慌てた様子で止められた。
「よく似合ってるから、まだしばらくそのままで」
「……? そうかい? わかったよ」
 特に不都合はないので悪魔が帰るまで身につけていたが、彼の好みは時々、よくわからない。
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