96話 幸せを何度も
この国の夏はそれほど気温が高くはならないとはいえ、やはり他の季節に比べて暑いことは暑い。私のような天使は人間のような暑さ寒さを感じないが、暑い昼間にカップアイスを食べている人々を見ていると、暑い中で涼を取る、その境地を実感してもみたくなる。そういうわけで今日は、人間と同様に暑さを感じられるよう、体を調節してみた。久々にやったので、教会での説教中には汗が噴き出してきて大変だった。
「先輩は今日、珍しく暑そうでしたね。いつも涼しげでらっしゃるのに」
そう言うマイケルも、黒いカソック姿であちこち駆け回って暑そうだった。
「そうなんだよ。今日はちょっとね。休憩時間にアイスを食べたかったのだけど、抜け出せなかった」
せっかく暑さを感じるように調節したと言うのに。
私の口調がよほど残念そうに聞こえたのか、マイケルは「それなら」と、日が沈み始めた時間帯に中庭へ誘ってくれた。昼間の蒸し暑さはどこへやら、夕方には教会の陰になる中庭には、涼しい風が吹き抜けている。
「夕涼みはできましたね」
マイケルがにっこりと言う。
「うん。これもとても良い心地だ」
人間は一日のうちに何度も幸せを感じられるのだ。私はすっかり嬉しくなって、目を閉じた。夜を運ぶ優しい風が、髪を撫でる。
「先輩は今日、珍しく暑そうでしたね。いつも涼しげでらっしゃるのに」
そう言うマイケルも、黒いカソック姿であちこち駆け回って暑そうだった。
「そうなんだよ。今日はちょっとね。休憩時間にアイスを食べたかったのだけど、抜け出せなかった」
せっかく暑さを感じるように調節したと言うのに。
私の口調がよほど残念そうに聞こえたのか、マイケルは「それなら」と、日が沈み始めた時間帯に中庭へ誘ってくれた。昼間の蒸し暑さはどこへやら、夕方には教会の陰になる中庭には、涼しい風が吹き抜けている。
「夕涼みはできましたね」
マイケルがにっこりと言う。
「うん。これもとても良い心地だ」
人間は一日のうちに何度も幸せを感じられるのだ。私はすっかり嬉しくなって、目を閉じた。夜を運ぶ優しい風が、髪を撫でる。