91話 共に泳ぐように

 結局あの後、ダイアナはどうしてもうまく折ることができずに悪魔の兄ちゃんに頼り、ぼくと兄ちゃんによる折り紙版の鯉のぼりが完成した。上から黒、青、桃色、茶色の、簡素というか抽象的な形の鯉が、ダイアナ作の折り紙四枚ほどを使用した、のぼり棒に貼付された。
「これはえーっと、悪い兄ちゃんに天使の兄ちゃんにダイアナに……ぼく?」
「そうよ! 獏の髪の毛は黒っぽいけれど、太陽の下では茶色に見えるでしょう? 本当はここに使い魔のみんなも入れてあげたいのだけど、とりあえず私と獏がみんなの代表ってことで」
 満面の笑みで、ダイアナはその鯉のぼりをぼくに差し出した。
「はい、プレゼントよ! 私とお兄様と一緒に作ったんだから、大切にしてね!」
「あ、ああ……」
 プレゼント、なんてもらったのは、いつぶりだろう。ただ人の夢を食べて生きてきただけなのに、ぼくは。
 昨年の年越しの夜に見た、ダイアナの吉夢を思い出す。ダイアナの大切な人たちが勢揃いする中にいたぼくの姿が茶色の鯉に重なって、言葉を失う。
「獏、いつもありがとう。これからもよろしくね!」
 明るく、陽の匂いのするダイアナの笑顔に、ぼくも思わずつられて笑った。
「こちらこそ、これからもよろしく」
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