89話 beautiful things on valentine day.
「どうしたんだ、天使サマ。何かいいことがあったって顔だぜ」
一日の仕事を終えて落ち合った喫茶店で贈り物を交換しあった後、黒髪の悪魔はニヤリと笑った。
「さすが、お前は何でもお見通しなんだな。それじゃあ、クイズ。今日はどんないいことがあったでしょう」
「んー。信者の人間から心温まるカードをもらった、とか」
ブラックコーヒーを飲み干すより先に、悪魔は即答した。
「な、なんでそれを」
「今日は聖バレンタインの祝祭日だからな。そんなとこだろうと」
そちらを言い当てられるとは思っていなかったので狼狽えてしまったが、私はティーカップに口をつけて気を取り直した。
「でもね、実はまだあるんだよ」
「そうなのか?」
悪魔の、炎の赤を隠した黒眼が私をじっと見つめ、……ふっと緩んだ。
「そっちはわからん。話してくれ」
「ふふ。実は今日も、人間の心の美しさに感じ入ることがあってね」
男は私の話に耳を傾ける。
窓の外では微かに、雪がちらつき始めた。若き神父の幸せを願いながら私は、人間の愛について話し続けた。
一日の仕事を終えて落ち合った喫茶店で贈り物を交換しあった後、黒髪の悪魔はニヤリと笑った。
「さすが、お前は何でもお見通しなんだな。それじゃあ、クイズ。今日はどんないいことがあったでしょう」
「んー。信者の人間から心温まるカードをもらった、とか」
ブラックコーヒーを飲み干すより先に、悪魔は即答した。
「な、なんでそれを」
「今日は聖バレンタインの祝祭日だからな。そんなとこだろうと」
そちらを言い当てられるとは思っていなかったので狼狽えてしまったが、私はティーカップに口をつけて気を取り直した。
「でもね、実はまだあるんだよ」
「そうなのか?」
悪魔の、炎の赤を隠した黒眼が私をじっと見つめ、……ふっと緩んだ。
「そっちはわからん。話してくれ」
「ふふ。実は今日も、人間の心の美しさに感じ入ることがあってね」
男は私の話に耳を傾ける。
窓の外では微かに、雪がちらつき始めた。若き神父の幸せを願いながら私は、人間の愛について話し続けた。