82話 想いを継いで 聖夜の贈り物
「その直後のことだったよ。別の皇帝が即位して、キリスト教が国教となったのは。彼は解放されて、それから死ぬまでずっと善行を行い続けた」
「列聖までされたものな」
男は軽く頷いて、残っていたケーキのかけらを頬張った。その姿を見ていて、ふと思い出した逸話がある。ニコラウスが行った奇跡のひとつ、今ではあまり人口に膾炙していないらしい事件の話だ。
「そういえば、彼が子供たちの守護聖人となった理由の逸話……、あれにはお前たち悪魔が関わっていたんじゃないのか」
そうとしか思えない残虐な事件だったが、ニコラウスはそれも見事に解決したという。
私の悪魔はフォークを横に振った。
「かもしれんが、俺はそれに関しては潔白だぜ。何せその時代、俺はまだ存在していなかった」
「そうか」
その言い方が面白くて、つい笑ってしまう。こういう時、彼は私よりも『若かった』のだと、なんだか不思議な気持ちになる。
「まあ何にせよ、彼の存在が……貧しいものたちへの施しという善行の伝説が現在のサンタクロースに繋がり、子供たちの幸せを守ってくれているんだと思うと、……人間というものは、本当に素敵な生き物だと思うよ」
私の言葉に、次は男が笑う番だった。
「ははっ。実に天使サマらしい考えだ。そういうところ、本当に好きだぜ」
「ありがとう」
男はフォークを、私はカップをテーブルに置いて、顔を見合わせた。もう、ダイアナちゃんはすっかり寝ついたことだろう。
そろそろ頃合いだ。
「それじゃあ私たちも」
「おてんば娘のために、聖ニコラオスの系譜を一夜限り継ぐとするか」
笑い合い、空中に出現させたプレゼントの袋を抱え、私たちはそっと席を立った。
「列聖までされたものな」
男は軽く頷いて、残っていたケーキのかけらを頬張った。その姿を見ていて、ふと思い出した逸話がある。ニコラウスが行った奇跡のひとつ、今ではあまり人口に膾炙していないらしい事件の話だ。
「そういえば、彼が子供たちの守護聖人となった理由の逸話……、あれにはお前たち悪魔が関わっていたんじゃないのか」
そうとしか思えない残虐な事件だったが、ニコラウスはそれも見事に解決したという。
私の悪魔はフォークを横に振った。
「かもしれんが、俺はそれに関しては潔白だぜ。何せその時代、俺はまだ存在していなかった」
「そうか」
その言い方が面白くて、つい笑ってしまう。こういう時、彼は私よりも『若かった』のだと、なんだか不思議な気持ちになる。
「まあ何にせよ、彼の存在が……貧しいものたちへの施しという善行の伝説が現在のサンタクロースに繋がり、子供たちの幸せを守ってくれているんだと思うと、……人間というものは、本当に素敵な生き物だと思うよ」
私の言葉に、次は男が笑う番だった。
「ははっ。実に天使サマらしい考えだ。そういうところ、本当に好きだぜ」
「ありがとう」
男はフォークを、私はカップをテーブルに置いて、顔を見合わせた。もう、ダイアナちゃんはすっかり寝ついたことだろう。
そろそろ頃合いだ。
「それじゃあ私たちも」
「おてんば娘のために、聖ニコラオスの系譜を一夜限り継ぐとするか」
笑い合い、空中に出現させたプレゼントの袋を抱え、私たちはそっと席を立った。