78話 Like an angel.
目を真っ赤に腫らした元主人に見送られ、俺と天使は屋敷を出た。暫く歩いたところで天使は変身を解き、ひと月振りに見る姿に戻った。ずっと俺の膝の辺りで動いていた顔が肩の下あたりにきて、ホッとする。
「ラブ、今回は本当に世話をかけたね。まさかこんなに長い間、記憶が戻らなくなるなんて思わなかったよ」
「まったくだぜ。天使サマの変身音痴にも困ったもんだ」
肩をすくめて見せると、天使はくすくす笑った。
「しかし、お前のメイド姿はよく似合っていたな」
思い出したのか、天使はひとり、うんうんと頷いた。
「そうか。天使サマに似合っていると言われるのは嬉しいな」
「うん。本当によく似合っていたからね。……子供の姿でいた時も、私はお前が好きだったよ。ひと目見た時、このメイドさんと結婚したい、って思ったんだ。お互い姿も年齢も違っていたし、私はお前のことをすっかり忘れていたというのにね。ふふ、少し不思議だね」
顔が熱い。
「俺だって、お前が子供の姿だろうと関係なく好きだったさ。何度攫ってしまおうと思ったか」
「だけど、お前はしなかった。やろうと思えば屋敷の人間たちの記憶を消して、私を攫ってしまったってよかったのに」
俺の腕に自身の腕を絡ませ、天使は温かい体を寄せてきた。
「……お前が人間の生活を知る、良い機会になると思っただけさ」
天使は麗らかな陽光に目を細め、頷いた。
「うん。ありがとう」
「どういたしまして」
顔を見合わせて、微笑みを交わし合う。久方ぶりに肩を並べて歩けることの幸せが、俺たちを包んでいた。
「ラブ、今回は本当に世話をかけたね。まさかこんなに長い間、記憶が戻らなくなるなんて思わなかったよ」
「まったくだぜ。天使サマの変身音痴にも困ったもんだ」
肩をすくめて見せると、天使はくすくす笑った。
「しかし、お前のメイド姿はよく似合っていたな」
思い出したのか、天使はひとり、うんうんと頷いた。
「そうか。天使サマに似合っていると言われるのは嬉しいな」
「うん。本当によく似合っていたからね。……子供の姿でいた時も、私はお前が好きだったよ。ひと目見た時、このメイドさんと結婚したい、って思ったんだ。お互い姿も年齢も違っていたし、私はお前のことをすっかり忘れていたというのにね。ふふ、少し不思議だね」
顔が熱い。
「俺だって、お前が子供の姿だろうと関係なく好きだったさ。何度攫ってしまおうと思ったか」
「だけど、お前はしなかった。やろうと思えば屋敷の人間たちの記憶を消して、私を攫ってしまったってよかったのに」
俺の腕に自身の腕を絡ませ、天使は温かい体を寄せてきた。
「……お前が人間の生活を知る、良い機会になると思っただけさ」
天使は麗らかな陽光に目を細め、頷いた。
「うん。ありがとう」
「どういたしまして」
顔を見合わせて、微笑みを交わし合う。久方ぶりに肩を並べて歩けることの幸せが、俺たちを包んでいた。