56話 Children’s happy day
「お兄様! 今日は子供の日なんですって」
帰宅して早々、私はお兄様のお部屋に突撃した。真っ黒な部屋で真っ黒な机に向かって真っ黒なパソコンで何か仕事をしていたらしいお兄様が、顔を上げた。
「日本の話だろう。ここは日本じゃないぜ」
「むう。でも、別にどこの国のお祭りだったとしても、楽しめれば、それが一番じゃない」
私の言葉に、お兄様はぷっと吹き出した。滅多に見せない、珍しい表情。私がポカンとしていると、お兄様はパソコンを閉じて立ち上がった。
「本当にお前は、どんどん悪魔らしくなっていくな。俺は何も教えてないってのに」
言いながらお兄様はキッチンへ歩き出し、ついでに私の頭をポンと撫でた。大きな掌の、優しい感触が嬉しい。
「柏餅、だったか? あんこが大丈夫なら、作ってやる。苦手なら、チョコレート入りの特製のやつにしてやるよ」
思わず笑顔になる。お兄様は悪魔だけれど、時々、本当にそうなのかしらと思えてしまう。
それは、私が少しずつ、悪魔らしくなっているからなのかもしれないけれど。
「それじゃあ、どっちも作ってちょうだい!」
「欲張りなやつだな」
そうだ、どうせならあいつも呼ぼうか、なんて言いながら、お兄様はお菓子作りの準備を始めた。
あんこって、どんな味かしら。
由来も何もよくわからないまま、私は遠い国のお祭りに感謝した。
帰宅して早々、私はお兄様のお部屋に突撃した。真っ黒な部屋で真っ黒な机に向かって真っ黒なパソコンで何か仕事をしていたらしいお兄様が、顔を上げた。
「日本の話だろう。ここは日本じゃないぜ」
「むう。でも、別にどこの国のお祭りだったとしても、楽しめれば、それが一番じゃない」
私の言葉に、お兄様はぷっと吹き出した。滅多に見せない、珍しい表情。私がポカンとしていると、お兄様はパソコンを閉じて立ち上がった。
「本当にお前は、どんどん悪魔らしくなっていくな。俺は何も教えてないってのに」
言いながらお兄様はキッチンへ歩き出し、ついでに私の頭をポンと撫でた。大きな掌の、優しい感触が嬉しい。
「柏餅、だったか? あんこが大丈夫なら、作ってやる。苦手なら、チョコレート入りの特製のやつにしてやるよ」
思わず笑顔になる。お兄様は悪魔だけれど、時々、本当にそうなのかしらと思えてしまう。
それは、私が少しずつ、悪魔らしくなっているからなのかもしれないけれど。
「それじゃあ、どっちも作ってちょうだい!」
「欲張りなやつだな」
そうだ、どうせならあいつも呼ぼうか、なんて言いながら、お兄様はお菓子作りの準備を始めた。
あんこって、どんな味かしら。
由来も何もよくわからないまま、私は遠い国のお祭りに感謝した。