55話 新しい光
愉快だった。
わたしの仕事の最後のピースを奪い去っていった男が、今、憎悪に燃える黒い瞳でこちらを見つめている。蛇の瞳の悪魔、ほとんどわたしと大差ない働きぶりで、ご主人様からの覚えもめでたいこの男に、ひと泡吹かせてやるときがきた。
数メートル離れて立っている男にもよく見えるように、椅子に座らせた天使の金髪を引っ張る。意識を失い、人形のように 仰 け 反 った白い首元に、爪を食い込ませる。黒髪の男は、ぎりと歯軋りをして、わたしを睨んだ。
「エンジェルを放せ。そいつは関係ないだろう」
「関係ない? 仕事の邪魔をされて仕返ししたい相手の、弱点ですよ。関係ないわけがないでしょう」
白い肌に、赤い玉が、ぷつりと浮かぶ。端正な顔が、苦しげに歪む。
「くそ、要求はなんだ? 人間どもの魂か? なら、好きなだけくれてやる。だから……」
「そんなもの、貴方から奪うほど不自由していませんよ。わたしはただ、貴方が苦しむ姿を見たいだけです。でも、そうですね。強いていうなら……わたしが欲しいのは、ただひとつ」
特に何の用も為さない眼鏡の位置をちょっと直してから、男を見据える。その、憔悴しきった表情を、舐め回して楽しむ。
「ダイアナ・エバ・クラークの魂です」
わたしの仕事の最後のピースを奪い去っていった男が、今、憎悪に燃える黒い瞳でこちらを見つめている。蛇の瞳の悪魔、ほとんどわたしと大差ない働きぶりで、ご主人様からの覚えもめでたいこの男に、ひと泡吹かせてやるときがきた。
数メートル離れて立っている男にもよく見えるように、椅子に座らせた天使の金髪を引っ張る。意識を失い、人形のように
「エンジェルを放せ。そいつは関係ないだろう」
「関係ない? 仕事の邪魔をされて仕返ししたい相手の、弱点ですよ。関係ないわけがないでしょう」
白い肌に、赤い玉が、ぷつりと浮かぶ。端正な顔が、苦しげに歪む。
「くそ、要求はなんだ? 人間どもの魂か? なら、好きなだけくれてやる。だから……」
「そんなもの、貴方から奪うほど不自由していませんよ。わたしはただ、貴方が苦しむ姿を見たいだけです。でも、そうですね。強いていうなら……わたしが欲しいのは、ただひとつ」
特に何の用も為さない眼鏡の位置をちょっと直してから、男を見据える。その、憔悴しきった表情を、舐め回して楽しむ。
「ダイアナ・エバ・クラークの魂です」