軽やかに歩く

 鏡に映る私は別人だった。七十年間通してきた長髪を、思い切って耳までで揃えてもらったのだ。それも、ミントのように綺麗な緑色の筋まで入れていただいて。
「よくお似合いですよ」
 にこやかに見送られて店を出る。
 生まれ変わった。
 今日のために買ったストライプ柄のブラウスと黒いパンツを身につけてみる。貧相な老体だけれど、ずっと憧れていた「ボーイッシュ」な服装に、背筋が伸びる。
『女の子は女の子らしく。当たり前でしょう』
 ああ、時代は変わった。嘗て私を縛った鉄枷は、既に錆びて砕けた。
「年甲斐もなく……」
 コソコソと囁き交わすご近所さんにはとびきりの笑顔で挨拶を。
 春の風が首筋を撫でてゆく。
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