草むしりバレンタイン
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二コマ目の講義が終わり、チグサはさしたるあてもなく、ゆっくりと廊下を歩いていた。教授の都合で三コマ目の講義がなくなったので、突然空いた時間をどこで過ごそうかと考えていた。とりあえず食堂でお昼でも……と、吹き抜けになっている食堂ホールの階段を降り始めた時だった。
「そんじゃモモちゃん、あとは任せたから! おれたちは他にやることがあるからさー、悪いね」
そんな男子の声の後に、さざめきのような笑いが響いた。階段の手すりに身を乗り出したチグサの目には、いつもの面々が映った。運動部に入っているとは思えないひょろりとした身体に軽佻浮薄な表情の男子らと、彼らに何度も頭を下げながら指示に従う、ひとりの女子。動物の耳のような、二つのお団子が特徴的な髪型の女子は、距離を考慮しても小さすぎる声で、男子と話している。チグサと同じ教養科目を履修している、 呉竹 モモだ。
あーあ、まただよ。
チグサは心の中でため息をつき、再び階段を降り始めた。食堂に着いた時には男子らはもういなかった。チグサは、ひとり取り残された様子のモモに声を掛けた。
「モモちゃん、大丈夫? またあいつら、仕事押し付けて帰っちゃったわけ?」
モモはびくっと体を震わせて振り返り、チグサを見て気弱な笑みを浮かべた。大きな目にはいつもどおり、たっぷりの涙が浮かんでいる。
「だ、だだだ大丈夫だよ、野木さん……! き、気にかけてくれてありがとう……」
「でもさあ、あいつら、ひどくない? なんでモモちゃんはあんなこと言われてもまだ陸上部なんて続けてんの?」
モモの表情は曇る。答えに迷うように、目が泳ぐ。
「で、でも……悪いことばかりじゃ、ないから……」
「そうなの? 全然、そうは見えないけどなあ」
モモは困ったように眉を寄せたまま、床に置いていたリュックを拾い上げた。
「そ、それじゃ野木さん、私、もう行かないとだからっ……」
「あ、うん。何か困ったことあったら言いなよ?」
「ありがとう……!」
いつもどおりに何もない所で躓きながら遠ざかっていくモモを見送り、チグサは「変な子」、と呟いた。
「そんじゃモモちゃん、あとは任せたから! おれたちは他にやることがあるからさー、悪いね」
そんな男子の声の後に、さざめきのような笑いが響いた。階段の手すりに身を乗り出したチグサの目には、いつもの面々が映った。運動部に入っているとは思えないひょろりとした身体に軽佻浮薄な表情の男子らと、彼らに何度も頭を下げながら指示に従う、ひとりの女子。動物の耳のような、二つのお団子が特徴的な髪型の女子は、距離を考慮しても小さすぎる声で、男子と話している。チグサと同じ教養科目を履修している、
あーあ、まただよ。
チグサは心の中でため息をつき、再び階段を降り始めた。食堂に着いた時には男子らはもういなかった。チグサは、ひとり取り残された様子のモモに声を掛けた。
「モモちゃん、大丈夫? またあいつら、仕事押し付けて帰っちゃったわけ?」
モモはびくっと体を震わせて振り返り、チグサを見て気弱な笑みを浮かべた。大きな目にはいつもどおり、たっぷりの涙が浮かんでいる。
「だ、だだだ大丈夫だよ、野木さん……! き、気にかけてくれてありがとう……」
「でもさあ、あいつら、ひどくない? なんでモモちゃんはあんなこと言われてもまだ陸上部なんて続けてんの?」
モモの表情は曇る。答えに迷うように、目が泳ぐ。
「で、でも……悪いことばかりじゃ、ないから……」
「そうなの? 全然、そうは見えないけどなあ」
モモは困ったように眉を寄せたまま、床に置いていたリュックを拾い上げた。
「そ、それじゃ野木さん、私、もう行かないとだからっ……」
「あ、うん。何か困ったことあったら言いなよ?」
「ありがとう……!」
いつもどおりに何もない所で躓きながら遠ざかっていくモモを見送り、チグサは「変な子」、と呟いた。