ワンルーム・トラベラー

 取得した有給の最終日、おれはすっきりと目覚めた。夢見が良かったからか、頭が冴え渡っているようだ。
 もはや『室内旅行』は不可能となった部屋から、無用となった周りの空き地を見渡す。
 ここはもうただの部屋で、周りはもう、ただの空き地だ。であるなら、おれも『ポートルーム』の居住権当選者ではなく、最近引っ越してきたばかりの、ただの旅行好きに戻ったのだと思おう。
 ただの旅行好きがすべきことなど決まっている。次の旅行の計画を立てるのだ。
 行きたい場所は沢山あるが、今最も行きたい場所は一つだ。今は詳細な場所が分からないが、それを知るための手がかりなら、五日滞在した分はある。教会の装飾や広場の規模、それらの地理に、気候など……しっかり記憶の中にある。
 昨晩見た夢の中で、カーチャは「待ってる」と言ってくれた。
 それが、おれの願望に過ぎなかったとしても、それがおれの願望に過ぎないのかどうか確かめるためにも、おれは必ず、君に会いに行く。そして、返せなかった答えを、その時には必ず。

 窓の向こうから、カーチャが微笑んでくれた気がした。
8/8ページ
スキ