愛情の深さ

 鬼太郎父(以下「ゲ父」)の、妻への一途な愛・子への慈愛・種を超えた人間たちへの愛(憐れみともいう)の、深さと広さに泣いた。
 物語終盤、我が子がこれから生まれてくる世界、信頼した相棒が生きていく世界を見る(これも「愛する」と言っていいと思う)ために自分を擲つことのできる覚悟の深さ。
 人間を恨んでいたのに、愛する妻が愛する人間をいつしか許すようになっていた、その本質的な度量の広さ。
 そんな、あまりにも広い心の持ち主である彼の愛情深さに、中盤以降何度も泣かされた。
 ゲ父に関しては、妻の回想をする場面でも泣いた。愛情深い女だった、と言うところでもうダメだった。あいつがいなかったらわしは今頃どうしていたか、と言うところが、これは以前見た「オットーという男」でも描かれていたような深い絆で結ばれた夫婦愛でそこでも泣いたのだが、単純に「自分の根本を変えうるだけの愛を獲得した幸福さ」にやられたのだろうと思う。これはごく個人的な感動ポイントなのかもしれないが、新劇エヴァのゲンドウなんかにも通じる、自分という存在そのものを根本から書き換えてしまうようなエネルギーを持った存在を愛する、という描写に弱いのかもしれない。(まあオットーやゲンドウは別の愛情の対象に出会うまで自分を変えるところまでは行かなかったように思うが)
 また、鬼太郎母(以下「ゲ母」)の愛もすごい。
 一族を虐げてきた人間を愛し、寄り添い、ゲ父の気持ちまで変え、子供をずっっっと守り続けて耐えてきた、その愛情の深さ……泣ける、泣くしかない。そして恐らくは、あんな目に遭ってもなお、人間を恨んだり呪ったりしなかった(のだろうと思われる)。もう、本当になんて……できた方だろう。
 一緒に見た母に言われて確かにと思ったのが、我が子をずっと守り続けてきたということは、決して諦めず、いつかゲ父が助けに来てくれると信じていた証でもある。なんという信頼の深さだろう……。
 また、幽霊族の祖先たちが最後の最後、ゲ父に力を貸して守ってくれた場面でも泣いた。本当に、最後の最後に残っていた力を振り絞って、同族の末裔たちを守ろうとしてくれた、彼らの優しさと絆に泣く。
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