novelmber 2023

「しかし、その困難は彼の輝かしい人生における序章に過ぎなかった」
 俺は職場のトイレ個室内で、スマホのロック画面に設定してある文面を読み上げた。流れる水の音に紛れる程度の声量で。
 そうだ、俺はこんなことで諦めない。
「序章……」
 吐き気がする。頭が痛む。
 終わりの見えないそれに押し潰される。
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