novelmber 2023

 美しい声の人魚だった。岩上で歌っているのをよく眺めた。
 しかしある時、姿を消した。豪華な船が着岸してから。乗っていた王子に恋をしたのだ。
 ああ、哀れな人魚。人魚が陸に上がるには、声を失わねばならない。
 数日後、岩の上にふたりの人魚を見た。王子は選んだのだ。
 私はひとり泣いた。
 初恋だった。
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