思い出の音

「思い出の音は何ですか」
 人気の傘屋に行くと、そう言われた。困惑したが言われた通りに記憶を辿り、話をした。
 暫くして主人が持って来たのは、何の変哲もない黒い傘だった。店を出ると雨だったので、早速開いてみた。
 雨雫が当たるたび、幼時に母が歌ってくれた、子守唄の旋律が、私の体を包んだ。
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