扉を叩く
幼時、ぼくは内に籠っていた。閉じた世界の扉を叩いてくれたのが、家政婦のお姉さんだ。
「今日のお母さんの機嫌でしょ」
ぼくが日毎に塗り潰す方眼ノートを見て、彼女は笑った。
ぼくの扉はあの時開いた。
今、ぼくは嘗てのぼくの様な子に会う仕事をしている。この子の扉はどこにあるのかを楽しみながら。
「今日のお母さんの機嫌でしょ」
ぼくが日毎に塗り潰す方眼ノートを見て、彼女は笑った。
ぼくの扉はあの時開いた。
今、ぼくは嘗てのぼくの様な子に会う仕事をしている。この子の扉はどこにあるのかを楽しみながら。