彼岸へ

 暗い方へ降りてゆく。微かな水音が耳に届く。いつから、こんなに狭くじめじめした通路を歩いているのだろう。
 思い出せないまま、開けた河原に出た。
 呆気に取られていると、小さな舟の上から男が手を差し出す。なぜだか渡すものを分かっている私の手は、ポケットの中から小銭を取り出した。
 六文銭――。
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