波に攫われる

 近所のお姉さんは夏になるとぼくを連れて海へ行く。
「あれ何の跡?」
 砂浜には多くの生き物がいて、その痕跡が砂に残ることを教えてくれたのも、お姉さんだった。
「……彼女だ」
 お姉さんはふらふらと海へ入り、戻らなかった。
 砂浜に大きなヒレの跡とお姉さんの足跡が暫く残っていたけど、やがて消えた。
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