レプリカ

 美術品をこよなく愛する彼は、それらのレプリカを買い集めては部屋に飾っている。
「レプリカは本物と違って、触れて愛でることができるんだ。本物そっくりなのに。最高じゃないか」
 私を部屋の中心に据え、彼は先程と同じ舌でひとしきり愛を囁く。
 私は誰のレプリカなの、という質問を、今日も呑み込む。
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