2025年

「私がいなくなっても貴女が私を忘れないように、仕掛けを施しておきましたからね」
 あの人はそう言った。
 毎朝、いないあの人の残り香で目が覚める。好んで使っていた香水を、夜中に家事ロボットが吹きかけているのだ。あの人がそうプログラムしたのだ。
 お陰で私はまだ慣れず、おはようを言ってしまう。

お題「残り香」
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