ペンギンズ・ハッピートーク~空想科学省心霊課創設の経緯~
オレンジジュースの影を見ることもなく店を出た私たちは、本通に出てタクシーを捕まえた。警察署まで、というエンデの声に、運転手は一瞬興味を惹かれたような顔つきをした。
「今更かもしれないが……、私も一緒に行って良いのか?」
車が走り出してから、私は隣に座るエンデに尋ねた。エンデは余裕のある態度で肯く。
「支障はないよ。そもそもあたしだって、完璧な部外者なんだからさ」
「しかし、それなのになぜ……」
「なぜって、警察があたしを頼りにしてるからに決まってるじゃん」
「そうなのか?」
「オウよ」
エンデは腕を組んで胸を張った。
「スズっちには言ってなかったっけ。あたし、これまでに二件の事件を解決に導いてるんだぜ」
「本当か。それは知らなかった」
私が感心しているのを見て、エンデは照れたように頭をかいた。
「いや、そんなたいしたことじゃないんだ。ただ、たまたま事件現場に居合わせて、たまたま警察が見落としたものを『見落としてますよー?』って教えたってだけなんだから」
一瞬、脳裏に、メガネと蝶ネクタイを身に付けた小学生の姿が浮かんだが、すぐにかき消した。
「で、今回も、あたしが調査してる時に、前の二件の時と同じ刑事さんと偶然出くわしちゃってね。あたしの考えを聞いたら、ぜひ協力してくれって言うからさ」
「なるほどね。……それで、今回その関係者を集めたと言うことは、もう犯人の目星はついているのか」
「ご明察。ただね、暴走族のメンバーなんてのは、ハナから眼中にないわけよ」
「と、言うと……?」
身を乗り出した私の目の前に、不意に突きつけられたのは、ペンギンのぬいぐるみだった。パペットというのだったか、ぬいぐるみの下部は縫い付けられておらず、そこから腕を通して、ペンギンの口を開け閉めすることができるようになっているようだ。エンデはそのパペットをはめて、黄色いくちばしをパクパクと開閉させた。
「…………?」
呆気に取られてぽかんとしてしまった私とは対照的に、エンデは心底から楽しそうに微笑んだ。
「このペンギン君が、事件を解決してくれちゃうのだよ」
そうして、むっふふふ、と、怪しい含み笑いを漏らしたのだった。
「今更かもしれないが……、私も一緒に行って良いのか?」
車が走り出してから、私は隣に座るエンデに尋ねた。エンデは余裕のある態度で肯く。
「支障はないよ。そもそもあたしだって、完璧な部外者なんだからさ」
「しかし、それなのになぜ……」
「なぜって、警察があたしを頼りにしてるからに決まってるじゃん」
「そうなのか?」
「オウよ」
エンデは腕を組んで胸を張った。
「スズっちには言ってなかったっけ。あたし、これまでに二件の事件を解決に導いてるんだぜ」
「本当か。それは知らなかった」
私が感心しているのを見て、エンデは照れたように頭をかいた。
「いや、そんなたいしたことじゃないんだ。ただ、たまたま事件現場に居合わせて、たまたま警察が見落としたものを『見落としてますよー?』って教えたってだけなんだから」
一瞬、脳裏に、メガネと蝶ネクタイを身に付けた小学生の姿が浮かんだが、すぐにかき消した。
「で、今回も、あたしが調査してる時に、前の二件の時と同じ刑事さんと偶然出くわしちゃってね。あたしの考えを聞いたら、ぜひ協力してくれって言うからさ」
「なるほどね。……それで、今回その関係者を集めたと言うことは、もう犯人の目星はついているのか」
「ご明察。ただね、暴走族のメンバーなんてのは、ハナから眼中にないわけよ」
「と、言うと……?」
身を乗り出した私の目の前に、不意に突きつけられたのは、ペンギンのぬいぐるみだった。パペットというのだったか、ぬいぐるみの下部は縫い付けられておらず、そこから腕を通して、ペンギンの口を開け閉めすることができるようになっているようだ。エンデはそのパペットをはめて、黄色いくちばしをパクパクと開閉させた。
「…………?」
呆気に取られてぽかんとしてしまった私とは対照的に、エンデは心底から楽しそうに微笑んだ。
「このペンギン君が、事件を解決してくれちゃうのだよ」
そうして、むっふふふ、と、怪しい含み笑いを漏らしたのだった。