ペンギンズ・ハッピートーク~空想科学省心霊課創設の経緯~
桜の花びらが、はらりはらりと舞い落ちる。柔らかな陽光が街路樹に降り注ぎ、歩道には木漏れ日が揺れている。新しいランドセルを背負った小学生たちが、笑いさざめきながら駆けていく。私はそうした暖かい空気を窓ガラス越しに感じながら、何をするでもなくぼんやりと、外を眺めていた。
ここは古ぼけたビルの四階に当たる。外に張り出している看板に書いてあるとおり、自称・名探偵、覆水 再起 の事務所である。私が彼の下で助手として働くようになってから、既に一年近くが経とうとしている。その間には色色と面白いこともあったが、ここ数ヶ月はそれほど大きな事件もなく、それこそ現在の陽気のような、のんびりとした状態が続いていた。そもそも私は助手として雇われた身だが、実質的に「助手」の役割を果たしているのは私ではなく、元から覆水に付き従っている彼女――きりりとした顔立ちの、少女のように髪の毛を二つに結んだ助手の女性――なので、本格的な依頼や調査というものに関わらせてもらえた試しがない。初め覆水は、私を危ない目にあわせたくないからという理由で、本格的な依頼がきていること自体を私に隠していたくらいだ。まあ、それに関しては、時が経つにつれて隠し切れなくなり、とりあえずその依頼内容くらいまでは、私にも公開するようになったのだが。
それで今回も、私は事務所のお留守番というわけだ。
窓際に頬杖を突いて、あくびをする。助手の女性が真面目に雑用をこなしていったおかげで、留守番の私がすることは何もない。こうしてぼーっとしていると、近頃遇 っていない友人のことなどを思い出す。……そう、彼女とももう暫く遇っていないのだ。
あれは、今日のように暖かい、初夏のことだった。
ここは古ぼけたビルの四階に当たる。外に張り出している看板に書いてあるとおり、自称・名探偵、
それで今回も、私は事務所のお留守番というわけだ。
窓際に頬杖を突いて、あくびをする。助手の女性が真面目に雑用をこなしていったおかげで、留守番の私がすることは何もない。こうしてぼーっとしていると、近頃
あれは、今日のように暖かい、初夏のことだった。