機械仕掛けの涙

 寝台に横たわった男は、俺を見て微かに笑ったようだった。落ち窪んだ眼窩に命の最後の灯が瞬き、口元が引き攣るように細かく動いた。声はもう出せないようだ。
「よう。楽しめたか」
 俺の言葉に、男は頷いた。震えながら動かした右手が、寝台に縋り付く乙女の肩に置かれた。
「そうか。それは良かったな」
 少女は俺に目もくれず、死にゆく男の首元に顔を埋めている。
 男は腕のいい医者だった。自分の思う通りに動く『家族』を作るために患者の脳に穴を開け、最終的にカラクリ人形と共に引きこもった。俺と契約するまでにこの男がダメにした患者の数は二十五名。その分だけ重みの加わった男の魂は、間もなく俺の手中に納まる。
「死なないで」
 少女のか細い声に、むしろ満足げな表情で、男は目を閉じた。俺は立ち上る煙のような魂の端を引っ捕まえ、もう片方の手で少女の後頭部に手を突っ込み、小さな歯車を取り出した。
 少女は動きを止めた。もうすぐ、まなじりから流れ落ちていた涙も止まるだろう。
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