迷宮

 出口の見当たらない迷宮だった。

 ときおり人の話し声がするが、そちらに歩いても誰の姿も見当たらない。くぐもった、楽しそうな談笑に、私は妬ましく狂おしい懐かしさを感じる。分厚いガラス越しに、私から奪い去られた暖かさが息づいている気がして、喉元を掻きむしる。

 出口は見当たらない。高い窓から、永遠に沈まない日差しが差し込んでくる。

 何度目かの角を折れたとき、私は自分が微笑んでいることに気がつく。

 この迷宮は私が作ったのだった、と思い出す。
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