柔らかな避難所
柔らかい生き物だった。白く、固まる前の紙粘土のようにもちもちとして、手で引っ張ると、思ったよりも伸びた。毛はどこにも生えていない。小さいのは犬や猫ほどの大きさで、大きいのは馬ほどの大きさだった。象やラクダを思わせる、穏やかな黒目が、人間をじっと見つめた。
彼らは突然、現れた。これまで世界に存在したどの生物種にも属さない奇妙な生態を持ち、見かけ上は何も食べず、何も排泄しなかった。口もないから鳴き声も発さず、鼻もないから呼吸をしているとも思えなかった。
だが、彼らには目があった。四肢もあった。非常にゆっくり動き、行手に何かがあると、慎重に避けた。その緩慢さに見合う穏やかな性質を持っていて、他のすべての生き物に対して好意的な反応を見せた。
彼らはいつの間にか、地球上のあらゆる場所に存在していた。最初からそうであったかのように、すべての生き物と調和していた。人間を含め、すべての生き物は、柔らかい彼らに危害を加えようとはしなかった。そんなことはあり得なかった、と言ってもいい。
白く、穏やかな目とゆっくりと動く四肢を持った彼らと対峙すると、どんな猛った生き物でも、不思議と落ち着いてしまうのだ。それどころか、柔らかな彼らに寄り添って、リラックスしてしまう。
サバンナの草原で地位を争っていたライオンたちは柔らかい彼らが現れた途端、それをぐるりと囲んで眠りについた。母親を失って泣いていた子猿が、柔らかい彼らにしがみついてホッと安堵したように泣き止んだ。白衣を着た人間たちは注射器を持って近づいたが、柔らかな彼らの皮膚に針を刺す前に計画を取り止めてしまった。
白く柔らかな生き物が現れて、すべての争いが解決したかというと、そうではなかった。その生き物に出会い、いっとき休息を得たかに思えた動物たちは、やがてまた、彼らから離れていったからだ。動物たちは捕食も縄張り争いも銃火器による戦争もやめなかった。バリエーション豊かな傷つけ合いは、決して終わりを見なかった。
けれども世界は確実に、以前よりも生きやすい場所になった。
動物たちは、傷付いたら白く柔らかな生き物のそばで過ごすようになった。負った傷が回復するのをじっと待って、また自分の足で歩き去った。白く柔らかな生き物は、一時避難所だった。彼らは全てを受け入れて、全てとともに在った。
柔らかな避難所。その周りでは、何者も傷つくことはない。
もしもあなたが傷付いているのなら、白く柔らかな生き物を探してみてほしい。近くに見つからなければ、想像するだけでも十分だ。
あなたを決して傷つけない、あなたに備わった力を損なわない、あなたをどんな形でも否定することのない、そんな柔らかな生き物を。彼らを抱きしめ、彼らに抱きしめられ、あなたは眠る。
傷はきっと癒える。白く柔らかな生き物は、いつでもまた、あなたのそばに来てくれる。
あなたは再び、顔を上げる。
彼らは突然、現れた。これまで世界に存在したどの生物種にも属さない奇妙な生態を持ち、見かけ上は何も食べず、何も排泄しなかった。口もないから鳴き声も発さず、鼻もないから呼吸をしているとも思えなかった。
だが、彼らには目があった。四肢もあった。非常にゆっくり動き、行手に何かがあると、慎重に避けた。その緩慢さに見合う穏やかな性質を持っていて、他のすべての生き物に対して好意的な反応を見せた。
彼らはいつの間にか、地球上のあらゆる場所に存在していた。最初からそうであったかのように、すべての生き物と調和していた。人間を含め、すべての生き物は、柔らかい彼らに危害を加えようとはしなかった。そんなことはあり得なかった、と言ってもいい。
白く、穏やかな目とゆっくりと動く四肢を持った彼らと対峙すると、どんな猛った生き物でも、不思議と落ち着いてしまうのだ。それどころか、柔らかな彼らに寄り添って、リラックスしてしまう。
サバンナの草原で地位を争っていたライオンたちは柔らかい彼らが現れた途端、それをぐるりと囲んで眠りについた。母親を失って泣いていた子猿が、柔らかい彼らにしがみついてホッと安堵したように泣き止んだ。白衣を着た人間たちは注射器を持って近づいたが、柔らかな彼らの皮膚に針を刺す前に計画を取り止めてしまった。
白く柔らかな生き物が現れて、すべての争いが解決したかというと、そうではなかった。その生き物に出会い、いっとき休息を得たかに思えた動物たちは、やがてまた、彼らから離れていったからだ。動物たちは捕食も縄張り争いも銃火器による戦争もやめなかった。バリエーション豊かな傷つけ合いは、決して終わりを見なかった。
けれども世界は確実に、以前よりも生きやすい場所になった。
動物たちは、傷付いたら白く柔らかな生き物のそばで過ごすようになった。負った傷が回復するのをじっと待って、また自分の足で歩き去った。白く柔らかな生き物は、一時避難所だった。彼らは全てを受け入れて、全てとともに在った。
柔らかな避難所。その周りでは、何者も傷つくことはない。
もしもあなたが傷付いているのなら、白く柔らかな生き物を探してみてほしい。近くに見つからなければ、想像するだけでも十分だ。
あなたを決して傷つけない、あなたに備わった力を損なわない、あなたをどんな形でも否定することのない、そんな柔らかな生き物を。彼らを抱きしめ、彼らに抱きしめられ、あなたは眠る。
傷はきっと癒える。白く柔らかな生き物は、いつでもまた、あなたのそばに来てくれる。
あなたは再び、顔を上げる。
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