切々端々《きれぎれはしばし》

徒然考察

2023/10/04 22:20
考察
 ふと菜々子ちゃんの誕生日だからか、彼女のコミュ2の堂島さんについて考察していた。

 コミュ2の概要は以下の通り。忙しい父が久しぶりに早く帰宅すると知って、よろこぶ菜々子。さっそく帰ってくる父のために夕食の準備をしようとするが、父・堂島さんの好物であるたくあんのストックが無くなってしまっていることに気がついた。
 仕事を頑張ってきた父を喜ばせたい一心で、「遅くには勝手に外出しない」という父との約束を押して、番長くんとたくあんをジュネスへと買いに行く菜々子。その甲斐あってか、なんとかたくあんを入手した菜々子は父が喜んでくれる姿を期待して番長と帰路に着く。
 しかし、待っていたのは彼女の期待とは真逆の結果だった。帰宅すると父である堂島は「遅くには勝手に外出しない」という約束を破った菜々子と番長を激しく詰る。
 菜々子が思い描いていた、父である堂島の喜ぶ姿はない。「父を喜ばせたい」という想いをスルーされ、どころか彼は自分を庇ってくれた、なによりも菜々子の想いを汲んで一緒に買い物に着いてきてくれた番長の優しさまで踏みにじろうとする。
 そんな自分の話も聞いてくれない分からずやの父に対して「バカ!」と切ないセリフを残して去っていく菜々子。彼女の「バカ!」の意味が分からず、更に業を煮やす堂島。この出来事を通して、番長は堂島親子の根深いすれ違いを目の当たりにするのだった。

 ……概要を書いていて、菜々子ちゃんが父に抱く想いが通じない切なさにちょっと泣きそうになった。

 それで、新たに気がついたのはこのときの堂島さんの心境について。
 昔一度プレイしたときは「愛情表現が不器用なお父さんなんだな」くらいにしか思わなかったが、今では少し彼の心境に対しての解釈が変わってきている。

 あのときの堂島さんは、菜々子が突然いなくなってしまったことが怖かったんじゃないかって。

 だって、堂島さんは奥さまを突然の事故で亡くしている。だから、あんな風に連絡もなく家を空けられてしまったのなら、当時の、最愛の奥さまを亡くしてしまった、あるべき人が欠けてしまった家の虚しい広さを思い出してしまっても致し方ないのだと思う。

 堂島さんの奥さまがどのように亡くなったのか、それがどのタイミングで堂島さんに届いたのかは分からない。けれど、菜々子ちゃんは幼稚園でなかなか来ないお母さんの迎えを待っていたと言っていた。

 ならば、いつもより早く帰ってきた堂島さんが、がらんどうの堂島家で奥さんと菜々子ちゃんを待っていた──という過去がある可能性だってある。

 奥さまを亡くしたときの状況とあまりにも酷似していて、そうでなくとも、突然いなくなった菜々子に奥さまを亡くした記憶を思い出してしまって、堂島さんはきっと、怖かったのだと思う。

 けれど、彼はその怖さを表に出すことはできなかった。一家を支える父としての義務感、性格上の不器用さがその恐れと相まって、空気を入れ過ぎた風船が破裂してしまうように、堂島さんはあんなにきつい態度を取ってしまったのだと思った。
 がらんどうの堂島家で、一人菜々子と番長くんの帰りを待っていた堂島さんの心境に想いを馳せてしまう。

 本当に不器用な人だ。堂島さんは。

 それと同時に、番長くんにも落ち度はあるなと思った。事前に、「たくあんを買いに行ってくる」と電話なりなんなりで伝えてれば、この親子のすれ違いは少しだけ軽減できたのではないかと。

 しかし、近場にあるジュネスへと向かうだけだし、自分がついていれば菜々子に滅多なことは起こらないと踏んでいたのだろうから、番長くんがそうした懸念に目を向けなかったのも分かってしまう。番長くんはこの時点で奥さんの事故について知らなかったわけだし。
  
 なんて、徒然な考察でした。お楽しみいただければさいわいです。

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