切々端々《きれぎれはしばし》
映画『グリーンブック』の感想。
2023/09/22 20:37日常
アマプラでやたらとオススメに出てきたので、「おう。いっちょ見てやろーじゃねーか」と腕捲りしながら視聴。結果、めっちゃ良かった。
舞台は1962年、黒人差別がひどかったアメリカ。就職先が改装工事で閉鎖し、失業してしまったイタリア系アメリカ人トニーは、腕っぷしの強さと物怖じしない性格を見込まれて、アフリカ系で黒人の容姿が顕著なクラシックピアニスト、ドン・シャーリーの運転手を引き受けることとなる。
雇用期間は、シャーリーの演奏ツアーが終わる8週間。そして2人は、シャーリーの演奏会のため、黒人への差別が色濃いアメリカ西部へ旅することとなる。
はじめは、粗暴な性格と黒人への偏見からシャーリーにひねくれた態度を取っていたトニーだが、彼の持つ天才的なピアノの才能や、知性豊かな振る舞いに絆され、2人の間には友情が芽生えていく。
そうやって、お互いの壁が取っ払われてまるで昔馴染みの友人のように話し合うトニーとシャーリーの掛け合いの気安く軽妙なこと! ずっと見てたいくらいに佐都は気に入りましたね。
「俺の父親がよく言ってた。何かをやるなら何でも100%でやれって。食べる時は最後の食事だと思えって」
「気にすんな。俺はニューヨークのナイトクラブでずっと働いてきたんだ。だから知ってるのさ。世界は・・・複雑だって」
まぁ、そんな風にシャーリーとの友情を深めていくのだが、そうするといままで気にしていなかった黒人への差別にどれだけシャーリーが苦しめられているか見えてくる。
この差別というのが、暴力とか直接的なものではないのだがとにかく陰湿だった。黒人は専用のホテル(モーテル)にしか泊まれないし、白人と一緒の手洗いは使ってはいけないし、公演前にもかかわらず食事を白人と同じ場所で食べてはいけないし……あげくの果ては夜に出歩いただけ警察に御用になるというひどさ。
そのせいで警察に勾留されてしまった2人だが、シャーリーの機転でなんとか切り抜ける。が、そこで度重なる黒人への差別で疲弊していたシャーリーは、いつものトニーの荒っぽい発言にコンプレックスを刺激され、胸の内にある悲しみを爆発させる。
黒人であるにも関わらず、白人社会の衣服と教養を身につけ、当時は迫害されていたゲイであるシャーリーは、道中、黒人たちからは白い目で見られ、白人にはぞんざいに扱われ、愛してくれる人さえいなかった。
「黒人でもなく白人でもなく男でもないわたしは何なんだ、トニー」
その、内に秘めた激しい孤独を爆発させたシャーリーの表情は胸が張り裂けそうなほど痛々しかった。
そんな誰にも見せられなかった孤独を見せたシャーリーにかけたトニーの言葉が私は大好きだった。
「先に書くんだよ、寂しいときは先に手を打たなきゃ」
寂しいときでも、辛いときでも、いつだって自分から先に手を打った人が助けられる。『わたしは困ってる、だから、察して、助けてよ』では、いつまでたっても助けられない。
助けたくても、伝えてくれなきゃ助けられない。と粗暴なトニーが、やんわりと、がんばってやさしい言葉で伝えたようとした誠意や、『寂しかったら、助けてやるよ』ってシャーリーに向けた精一杯の友愛が詰まっている素敵な言葉だった。
もう監督この言葉のために映画つくりましたね? ってくらい熱意こもってて、すごく感動した。
それで、映画の最後、この言葉がずっと2人間に横たわっていたのがいい。
クリスマス、旅を終えた2人は別れ、トニーは家族の待つ家に、シャーリーは自分だけが住む家に帰っていくんだけど、2人だけの旅で絆を深めあった結果、シャーリーはトニーの家に贈り物を持って訪ねてくる。トニーとその家族は嬉しそうに彼をハグし、あたたかな家の中に歓迎するというラストが最高でした。
孤独を抱え、最初はどこか冷たい表情をしてばかりいたシャーリーが、トニーとの出会いを通じて、あんな嬉しそうに綻んだ笑顔を見せるようになったのがねーーーー。もーーーーーー。
見終えて、胸がぽかぽかとあたたかくなる素敵なヒューマンドラマでした。オススメ。以上。
舞台は1962年、黒人差別がひどかったアメリカ。就職先が改装工事で閉鎖し、失業してしまったイタリア系アメリカ人トニーは、腕っぷしの強さと物怖じしない性格を見込まれて、アフリカ系で黒人の容姿が顕著なクラシックピアニスト、ドン・シャーリーの運転手を引き受けることとなる。
雇用期間は、シャーリーの演奏ツアーが終わる8週間。そして2人は、シャーリーの演奏会のため、黒人への差別が色濃いアメリカ西部へ旅することとなる。
はじめは、粗暴な性格と黒人への偏見からシャーリーにひねくれた態度を取っていたトニーだが、彼の持つ天才的なピアノの才能や、知性豊かな振る舞いに絆され、2人の間には友情が芽生えていく。
そうやって、お互いの壁が取っ払われてまるで昔馴染みの友人のように話し合うトニーとシャーリーの掛け合いの気安く軽妙なこと! ずっと見てたいくらいに佐都は気に入りましたね。
「俺の父親がよく言ってた。何かをやるなら何でも100%でやれって。食べる時は最後の食事だと思えって」
「気にすんな。俺はニューヨークのナイトクラブでずっと働いてきたんだ。だから知ってるのさ。世界は・・・複雑だって」
まぁ、そんな風にシャーリーとの友情を深めていくのだが、そうするといままで気にしていなかった黒人への差別にどれだけシャーリーが苦しめられているか見えてくる。
この差別というのが、暴力とか直接的なものではないのだがとにかく陰湿だった。黒人は専用のホテル(モーテル)にしか泊まれないし、白人と一緒の手洗いは使ってはいけないし、公演前にもかかわらず食事を白人と同じ場所で食べてはいけないし……あげくの果ては夜に出歩いただけ警察に御用になるというひどさ。
そのせいで警察に勾留されてしまった2人だが、シャーリーの機転でなんとか切り抜ける。が、そこで度重なる黒人への差別で疲弊していたシャーリーは、いつものトニーの荒っぽい発言にコンプレックスを刺激され、胸の内にある悲しみを爆発させる。
黒人であるにも関わらず、白人社会の衣服と教養を身につけ、当時は迫害されていたゲイであるシャーリーは、道中、黒人たちからは白い目で見られ、白人にはぞんざいに扱われ、愛してくれる人さえいなかった。
「黒人でもなく白人でもなく男でもないわたしは何なんだ、トニー」
その、内に秘めた激しい孤独を爆発させたシャーリーの表情は胸が張り裂けそうなほど痛々しかった。
そんな誰にも見せられなかった孤独を見せたシャーリーにかけたトニーの言葉が私は大好きだった。
「先に書くんだよ、寂しいときは先に手を打たなきゃ」
寂しいときでも、辛いときでも、いつだって自分から先に手を打った人が助けられる。『わたしは困ってる、だから、察して、助けてよ』では、いつまでたっても助けられない。
助けたくても、伝えてくれなきゃ助けられない。と粗暴なトニーが、やんわりと、がんばってやさしい言葉で伝えたようとした誠意や、『寂しかったら、助けてやるよ』ってシャーリーに向けた精一杯の友愛が詰まっている素敵な言葉だった。
もう監督この言葉のために映画つくりましたね? ってくらい熱意こもってて、すごく感動した。
それで、映画の最後、この言葉がずっと2人間に横たわっていたのがいい。
クリスマス、旅を終えた2人は別れ、トニーは家族の待つ家に、シャーリーは自分だけが住む家に帰っていくんだけど、2人だけの旅で絆を深めあった結果、シャーリーはトニーの家に贈り物を持って訪ねてくる。トニーとその家族は嬉しそうに彼をハグし、あたたかな家の中に歓迎するというラストが最高でした。
孤独を抱え、最初はどこか冷たい表情をしてばかりいたシャーリーが、トニーとの出会いを通じて、あんな嬉しそうに綻んだ笑顔を見せるようになったのがねーーーー。もーーーーーー。
見終えて、胸がぽかぽかとあたたかくなる素敵なヒューマンドラマでした。オススメ。以上。