Trick and Treat!!
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息の仕方を忘れてしまった。陽介の横隔膜は、スイッチが切れたように動かない。動かす労力が、すべて視神経に集まってしまったかのようだ。
衝撃的な衣装を着た瑞月から陽介は瞳をそらせない。ピント調節の機能だけが不休で働いて、瑞月の姿を隅から隅まで必死で収めようとしていた。
クラシカルナースの衣装を着た瑞月を。
コスプレであるのに、性的な匂いを感じさせない、清楚で素朴ないでたちだった。
左腕に十字の腕章をつけており、再現度も高い。白衣の天使といっても過言ではない出来栄えである。
紺色のナースワンピースは、瑞月の細椀を手首まで覆い、裾にフリルがあしらわれたAラインの上品なスカートが瑞月の脚をひざ下まで覆い隠している。露わになったふくらはぎも純白のハイソックスで包まれて肌の色が分からなかった。
アンダーであるナースワンピースの暗さによって、トップとなったエプロンの白さが輝かしい。着脱のためか、右胸の端に、純白のボタンが縦に2つ並んでいた。
瑞月の頭にはこれまた純白のナースキャップがはまっている。長く艶やかな黒髪は散らばらないよう、髪と同色の、レースのように儚いリボンで結ばれていた。
瑞月がお腹のあたりに手を組んで、しとやかな使用人を思わせる所作で陽介に向かって歩いてくる。
楚々とした動きに合わせて、エプロンの裾がひかえめに揺れた。革靴の音が大きくなるたびに、陽介の鼓動も大きさを増していく。
瑞月が革靴を丁寧に脱いだ。わざわざ靴をそろえてから、瑞月はベッドへ上がる。陽介の目に乾いた痛みを感じた。それもそのはず。瑞月が寝室に入ってきてから、瞬きの回数が激減していたのだから。
スカートのしわを整えて、瑞月は正座の形をとる。陽介と、瑞月の膝が向かいあった。正面から、陽介と瑞月は顔を合わせる。瑞月は顎を引いて伏し目がちであった。きょときょとと陽介は瞼の開閉を続ける。
なんとも言えない沈黙が過ぎたあと、瑞月が上目遣いで陽介を見つめた。白雪の頬に、ほんのりと朱鷺色が注す。
「その、陽介……おまえさまの、お気に召しただろうか」
「グブッ!」
「陽介ッ!?」
それを認めた瞬間、陽介の視界が赤く染まった。陽介は己の顔面に思いきり手のひらを打ち付けたのだ。バッチ―ンと、張りのある音がたつ。
慌てた瑞月は無理やりに陽介の手をどけた。相当な力で打ち付けたのだろう、陽介の顔面は赤くなっている。
「陽介ッ、どうしていきなり顔を打ち付けたんだッ!? 腫れてしまったらどうする」
「止めねーでくれ! こちとら目の前の光景が夢かどうか判別がつかないんだよッ!? 珍しく瑞月からお誘いがあったと思ったら俺の好きなナースだよ! じつは俺いま寝落ちして幻でも見てんじゃねーか!?」
「寝ているとしたら、今おまえさまの手をつかんでいる人間は誰だ! 私もおまえさまも起きているし、しばらく寝かせる気はないっ。夕食の約束を忘れたか陽介!」
「そのセリフ、言うのはフツー男だろうが!」
ひとしきり言い合いを済ませると、2人とも大きな息を吐く。落ち着きを取り戻した2人は再び向かい合う。
2人の距離が、互いの息、その温さを感じるほどに近かった。両腕を互いに取り合ったせいだ。もう幻などと疑いはかけられない。
瑞月への拘束を、陽介は解く。瑞月もまた陽介への拘束を解いた。空っぽになった腕に、陽介は瑞月を閉じ込める。
コスプレ衣装とはいえ、上質な生地らしい。毛羽立ちのないしっかりとした厚みの生地が、瑞月の華奢な体を覆っていた。
心地よくて、抱き込む手に力を籠めると、腕で囲った瑞月の体温が上がった気がする。素直な瑞月が、離しがたいほどいとおしい。
「……俺、エロ本とかでナース好きなんだけどさ、どっちかっつーとミニスカナースの方が好きだったんだよ」
「私を前にして、いかがわしい本の話題とは肝が据わっているではないか」
「悪い。でも、聞いてくれ。『だった』って言ったろ?」
低くなった瑞月の声に、慌てて陽介は謝る。すねた子供のごとく、瑞月は陽介の胸板にボスっと頭を押し付けた。額をぐりぐりと擦りつけ、瑞月は話を促す。よしよしと、瑞月の背中を手のひらで撫でて陽介は口火を切った。
「すっげ清楚でかわいいのな。クラシカルナースの服って。カンペキに、俺の性癖が変わったわ」
瑞月が胸板から離れる。おずおずと、水の膜で揺らぐ紺碧の瞳で陽介を見上げた。朱鷺色のほほに片手を添えて、陽介は瑞月に言い聞かせる。
「かわいいよ、瑞月。すっげー似合ってる。清楚な感じとか、健気な感じとか、おまえにぴったりだわ」
衝撃的な衣装を着た瑞月から陽介は瞳をそらせない。ピント調節の機能だけが不休で働いて、瑞月の姿を隅から隅まで必死で収めようとしていた。
クラシカルナースの衣装を着た瑞月を。
コスプレであるのに、性的な匂いを感じさせない、清楚で素朴ないでたちだった。
左腕に十字の腕章をつけており、再現度も高い。白衣の天使といっても過言ではない出来栄えである。
紺色のナースワンピースは、瑞月の細椀を手首まで覆い、裾にフリルがあしらわれたAラインの上品なスカートが瑞月の脚をひざ下まで覆い隠している。露わになったふくらはぎも純白のハイソックスで包まれて肌の色が分からなかった。
アンダーであるナースワンピースの暗さによって、トップとなったエプロンの白さが輝かしい。着脱のためか、右胸の端に、純白のボタンが縦に2つ並んでいた。
瑞月の頭にはこれまた純白のナースキャップがはまっている。長く艶やかな黒髪は散らばらないよう、髪と同色の、レースのように儚いリボンで結ばれていた。
瑞月がお腹のあたりに手を組んで、しとやかな使用人を思わせる所作で陽介に向かって歩いてくる。
楚々とした動きに合わせて、エプロンの裾がひかえめに揺れた。革靴の音が大きくなるたびに、陽介の鼓動も大きさを増していく。
瑞月が革靴を丁寧に脱いだ。わざわざ靴をそろえてから、瑞月はベッドへ上がる。陽介の目に乾いた痛みを感じた。それもそのはず。瑞月が寝室に入ってきてから、瞬きの回数が激減していたのだから。
スカートのしわを整えて、瑞月は正座の形をとる。陽介と、瑞月の膝が向かいあった。正面から、陽介と瑞月は顔を合わせる。瑞月は顎を引いて伏し目がちであった。きょときょとと陽介は瞼の開閉を続ける。
なんとも言えない沈黙が過ぎたあと、瑞月が上目遣いで陽介を見つめた。白雪の頬に、ほんのりと朱鷺色が注す。
「その、陽介……おまえさまの、お気に召しただろうか」
「グブッ!」
「陽介ッ!?」
それを認めた瞬間、陽介の視界が赤く染まった。陽介は己の顔面に思いきり手のひらを打ち付けたのだ。バッチ―ンと、張りのある音がたつ。
慌てた瑞月は無理やりに陽介の手をどけた。相当な力で打ち付けたのだろう、陽介の顔面は赤くなっている。
「陽介ッ、どうしていきなり顔を打ち付けたんだッ!? 腫れてしまったらどうする」
「止めねーでくれ! こちとら目の前の光景が夢かどうか判別がつかないんだよッ!? 珍しく瑞月からお誘いがあったと思ったら俺の好きなナースだよ! じつは俺いま寝落ちして幻でも見てんじゃねーか!?」
「寝ているとしたら、今おまえさまの手をつかんでいる人間は誰だ! 私もおまえさまも起きているし、しばらく寝かせる気はないっ。夕食の約束を忘れたか陽介!」
「そのセリフ、言うのはフツー男だろうが!」
ひとしきり言い合いを済ませると、2人とも大きな息を吐く。落ち着きを取り戻した2人は再び向かい合う。
2人の距離が、互いの息、その温さを感じるほどに近かった。両腕を互いに取り合ったせいだ。もう幻などと疑いはかけられない。
瑞月への拘束を、陽介は解く。瑞月もまた陽介への拘束を解いた。空っぽになった腕に、陽介は瑞月を閉じ込める。
コスプレ衣装とはいえ、上質な生地らしい。毛羽立ちのないしっかりとした厚みの生地が、瑞月の華奢な体を覆っていた。
心地よくて、抱き込む手に力を籠めると、腕で囲った瑞月の体温が上がった気がする。素直な瑞月が、離しがたいほどいとおしい。
「……俺、エロ本とかでナース好きなんだけどさ、どっちかっつーとミニスカナースの方が好きだったんだよ」
「私を前にして、いかがわしい本の話題とは肝が据わっているではないか」
「悪い。でも、聞いてくれ。『だった』って言ったろ?」
低くなった瑞月の声に、慌てて陽介は謝る。すねた子供のごとく、瑞月は陽介の胸板にボスっと頭を押し付けた。額をぐりぐりと擦りつけ、瑞月は話を促す。よしよしと、瑞月の背中を手のひらで撫でて陽介は口火を切った。
「すっげ清楚でかわいいのな。クラシカルナースの服って。カンペキに、俺の性癖が変わったわ」
瑞月が胸板から離れる。おずおずと、水の膜で揺らぐ紺碧の瞳で陽介を見上げた。朱鷺色のほほに片手を添えて、陽介は瑞月に言い聞かせる。
「かわいいよ、瑞月。すっげー似合ってる。清楚な感じとか、健気な感じとか、おまえにぴったりだわ」