Trick and Treat!!
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先に湯を浴びた陽介は、寝室で瑞月を待ってくれている。瑞月はコスプレ衣装を着つけながら、シワやめくれた箇所がないか確認する。陽介が待っていてよかったと思えるように、瑞月は自身を好ましい姿に装うのだ。
衣装の付属品である帽子をかむり、長い黒髪の穂先を同色のオーガンジーリボンで結ぶ。布地の薄さがちょうちょ結びと相まって、儚い鱗翅を思わせた。
鏡の前で、瑞月はくるりと回る。丈の長いスカートが舞った。だらしのないしわも、襟のそり返りもない。よしっと瑞月は両手を握る。ひとつ大きく息を吐いて、瑞月は寝室へと向かった。
瑞月はドアに手をかける。しかし、途端に羞恥やら不安がこみ上げて、ノブを回せない。
——瑞月の姿に陽介はどんな反応を見せるだろう。もし気に入らなかったら。場をしらけさせてしまったら。
臆病な想像を、瑞月は振り払う。怖気づく自分を叱責して、瑞月はドアをわずかに開いた。だが踏み出すための勇気が足りない。
臆病さが瑞月の足を縫い留める。けれどそれは、のぞき込んだ寝室の光景に断ち切られた。
瑞月のベッド、その上で陽介が正座で待っていたのだ。しかし、落ち着いた佇まいとはほど遠い。肩はこわばって、ときおり不自然なほど深く息を吐き出す。
恐らく瑞月からの誘いに動揺した心を必死で落ち着けようと試みているのだろう。心なしか、戸惑いと期待と喜びが入り混じった異性と初デートじみた雰囲気が漂っている。
——いや、陽介、私のこと好きすぎか。
陽介のいじらしさに、瑞月は息が詰まった。愛されているのだという実感がじわじわと湧き出して、目の奥で熱い潤いとなる。
不意に瑞月は、直斗の優しい言葉を思い出した。
『花村先輩は、誰よりも瀬名先輩を大切にしていますから。貴女が花村先輩を想って起こした行動なら、あの人は絶対に受け止めてくれるでしょう』
直斗の一言が背を押した。恥も不安もかき捨てて、陽介を抱きしめたい。いっとう熱を帯びた陽介に触れたい。勢いよく、瑞月は寝室のドアを開く。
物音に反応した陽介が顔を上げ、瑞月の姿を捉えて——絶句した。パジャマの首から上が急激に赤くなる。お湯に突っこまれた温度計のごとしだ。
上向きに引きつった口を開いたまま、真っ赤になった顔面から陽介は蒸気を吹き出す。
「え、あ、その……瑞月サン? それは」
言葉の少なさが、陽介の混乱を如実に表していた。だが、陽介のしぐさに嫌悪といった感情は見られない。
瑞月の身体から緊張が解ける。軽くなった身体のままに、瑞月は軽やかなターンを披露した。空気で広がる紺のスカートと、裾がひらめく純白のエプロンに陽介の目線が釘付けになる。いたずらっぽく笑って、瑞月は答えた。
「クラシカルナースの衣装だとも。おまえさま」
そう、陽介を癒すために瑞月が用意した衣装とは——クラシカルナースのコスチュームであった。
衣装の付属品である帽子をかむり、長い黒髪の穂先を同色のオーガンジーリボンで結ぶ。布地の薄さがちょうちょ結びと相まって、儚い鱗翅を思わせた。
鏡の前で、瑞月はくるりと回る。丈の長いスカートが舞った。だらしのないしわも、襟のそり返りもない。よしっと瑞月は両手を握る。ひとつ大きく息を吐いて、瑞月は寝室へと向かった。
瑞月はドアに手をかける。しかし、途端に羞恥やら不安がこみ上げて、ノブを回せない。
——瑞月の姿に陽介はどんな反応を見せるだろう。もし気に入らなかったら。場をしらけさせてしまったら。
臆病な想像を、瑞月は振り払う。怖気づく自分を叱責して、瑞月はドアをわずかに開いた。だが踏み出すための勇気が足りない。
臆病さが瑞月の足を縫い留める。けれどそれは、のぞき込んだ寝室の光景に断ち切られた。
瑞月のベッド、その上で陽介が正座で待っていたのだ。しかし、落ち着いた佇まいとはほど遠い。肩はこわばって、ときおり不自然なほど深く息を吐き出す。
恐らく瑞月からの誘いに動揺した心を必死で落ち着けようと試みているのだろう。心なしか、戸惑いと期待と喜びが入り混じった異性と初デートじみた雰囲気が漂っている。
——いや、陽介、私のこと好きすぎか。
陽介のいじらしさに、瑞月は息が詰まった。愛されているのだという実感がじわじわと湧き出して、目の奥で熱い潤いとなる。
不意に瑞月は、直斗の優しい言葉を思い出した。
『花村先輩は、誰よりも瀬名先輩を大切にしていますから。貴女が花村先輩を想って起こした行動なら、あの人は絶対に受け止めてくれるでしょう』
直斗の一言が背を押した。恥も不安もかき捨てて、陽介を抱きしめたい。いっとう熱を帯びた陽介に触れたい。勢いよく、瑞月は寝室のドアを開く。
物音に反応した陽介が顔を上げ、瑞月の姿を捉えて——絶句した。パジャマの首から上が急激に赤くなる。お湯に突っこまれた温度計のごとしだ。
上向きに引きつった口を開いたまま、真っ赤になった顔面から陽介は蒸気を吹き出す。
「え、あ、その……瑞月サン? それは」
言葉の少なさが、陽介の混乱を如実に表していた。だが、陽介のしぐさに嫌悪といった感情は見られない。
瑞月の身体から緊張が解ける。軽くなった身体のままに、瑞月は軽やかなターンを披露した。空気で広がる紺のスカートと、裾がひらめく純白のエプロンに陽介の目線が釘付けになる。いたずらっぽく笑って、瑞月は答えた。
「クラシカルナースの衣装だとも。おまえさま」
そう、陽介を癒すために瑞月が用意した衣装とは——クラシカルナースのコスチュームであった。