探偵殿への相談
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「——というわけで陽介を癒したいのだが、どうしたらよいだろうか? 直斗殿」
『……どうして僕に相談するんでしょう?』
「理由は3つ。1つ、直斗殿は犯罪事件の捜査に役立つ心理学の知識にも明るいと見立てた。2つ、陽介と私の共通の知人である。3つ、それなりに関係が発展している恋人の——」
『そ、それ以上は言わないでくださいッ!!』
平手を打つような大音量に、瑞月はスマホから耳を放した。電話の相手——白鐘直斗はきっと赤面しているのだろう。彼女は恋人持ちだ。相手と恋仲に至るまでに何回か瑞月も手助けをした。
好い人の名前に反応してうろたえる、うぶな後輩に瑞月は微笑みを抑えきれない。しかし、いたって平生を装って、直斗との通話を続けた。
「つまり、論理的にも、感情的にも、身内としての視点からも、冷静な視点で適切なアドバイスを打ち出してくれそうな人として、直斗殿が真っ先に思い浮かんだのだ。どうだろうか? 協力料として、私は君の恋人に関する情報を渡すが」
『……具体的には?』
ここまでのやり取りは想定済みだ。瑞月は間髪入れずに用意していた写メを送った。陽介の大学で行われた学園祭を訪れた、直斗の恋人——瑞月は彼と交友がある——の写真。
フランクフルトをパクついて口の端にケチャップを付けた姿があどけない。電話越しに、直斗が息を飲んだ。瑞月は唇を三日月に歪める。
「これはほんの手付けだ。このほかにも、私の持っている写真、彼の気に入った書籍、その他の情報を記載したリストを提供しよう」
『探偵として、価値のある情報は見逃せません。その取引、お受けしましょう』
「話が早くて助かるよ、直斗殿。ありがとう」
しめしめと、瑞月は電話越しにほくそ笑む。現代社会で持つべきものとは良質な情報であると改めて確信した。協力要請が完全に悪代官である。
しかし、頼む手順はどうであれ、一度引き受けた依頼に対して、直斗は真摯だ。彼女は一つ、咳払いをした。
『では、瀬名先輩の状況を整理してみましょう。瀬名先輩の目的は「花村先輩への癒し」でしたね。目的実現のため、瀬名先輩はどんな手段を用いるつもりでしょうか』
端的に、瑞月は事情を述べた。
10月31日。陽介と、瑞月の自宅で泊りがけのデートを企画していること。そのときに、何か目新しく、陽介を癒せるような催しをできないかと悩んでいること。すべて包み隠さず話した。
直斗はしばし沈黙する。瑞月の提供した情報から思考をまとめているのだろう。
『『花村先輩への態度』を変えるのは得策ではありませんね。貴女にそっけない、もしくは異常な対応をされたら、花村先輩は確実に落ち込むでしょうから。
宿泊中の食事は……料理の上手い瀬名先輩の方が詳しいでしょう。
……となると、僕が提案できるのは——『花村先輩と瀬名先輩が共に過ごす翌日までの時間』に実行できる作戦か……』
「なるべく陽介に負担を掛けず、目新しい刺激になり、陽介を癒せる作戦が良いのだが……」
すかさず瑞月は合いの手を入れ、肯定の意思を示す。恋人持ちである直斗に相談したのは、結局のところ『夜のアドバイス』を貰いたかったゆえである。
『ならば、こんな作戦はどうでしょうか?』
電話越しに、名探偵であり、策士でもある彼女が妖しく笑った気がした。
そうして、直斗から案を授けられた瑞月は、きたる10月31日を迎えたのであった。
『……どうして僕に相談するんでしょう?』
「理由は3つ。1つ、直斗殿は犯罪事件の捜査に役立つ心理学の知識にも明るいと見立てた。2つ、陽介と私の共通の知人である。3つ、それなりに関係が発展している恋人の——」
『そ、それ以上は言わないでくださいッ!!』
平手を打つような大音量に、瑞月はスマホから耳を放した。電話の相手——白鐘直斗はきっと赤面しているのだろう。彼女は恋人持ちだ。相手と恋仲に至るまでに何回か瑞月も手助けをした。
好い人の名前に反応してうろたえる、うぶな後輩に瑞月は微笑みを抑えきれない。しかし、いたって平生を装って、直斗との通話を続けた。
「つまり、論理的にも、感情的にも、身内としての視点からも、冷静な視点で適切なアドバイスを打ち出してくれそうな人として、直斗殿が真っ先に思い浮かんだのだ。どうだろうか? 協力料として、私は君の恋人に関する情報を渡すが」
『……具体的には?』
ここまでのやり取りは想定済みだ。瑞月は間髪入れずに用意していた写メを送った。陽介の大学で行われた学園祭を訪れた、直斗の恋人——瑞月は彼と交友がある——の写真。
フランクフルトをパクついて口の端にケチャップを付けた姿があどけない。電話越しに、直斗が息を飲んだ。瑞月は唇を三日月に歪める。
「これはほんの手付けだ。このほかにも、私の持っている写真、彼の気に入った書籍、その他の情報を記載したリストを提供しよう」
『探偵として、価値のある情報は見逃せません。その取引、お受けしましょう』
「話が早くて助かるよ、直斗殿。ありがとう」
しめしめと、瑞月は電話越しにほくそ笑む。現代社会で持つべきものとは良質な情報であると改めて確信した。協力要請が完全に悪代官である。
しかし、頼む手順はどうであれ、一度引き受けた依頼に対して、直斗は真摯だ。彼女は一つ、咳払いをした。
『では、瀬名先輩の状況を整理してみましょう。瀬名先輩の目的は「花村先輩への癒し」でしたね。目的実現のため、瀬名先輩はどんな手段を用いるつもりでしょうか』
端的に、瑞月は事情を述べた。
10月31日。陽介と、瑞月の自宅で泊りがけのデートを企画していること。そのときに、何か目新しく、陽介を癒せるような催しをできないかと悩んでいること。すべて包み隠さず話した。
直斗はしばし沈黙する。瑞月の提供した情報から思考をまとめているのだろう。
『『花村先輩への態度』を変えるのは得策ではありませんね。貴女にそっけない、もしくは異常な対応をされたら、花村先輩は確実に落ち込むでしょうから。
宿泊中の食事は……料理の上手い瀬名先輩の方が詳しいでしょう。
……となると、僕が提案できるのは——『花村先輩と瀬名先輩が共に過ごす翌日までの時間』に実行できる作戦か……』
「なるべく陽介に負担を掛けず、目新しい刺激になり、陽介を癒せる作戦が良いのだが……」
すかさず瑞月は合いの手を入れ、肯定の意思を示す。恋人持ちである直斗に相談したのは、結局のところ『夜のアドバイス』を貰いたかったゆえである。
『ならば、こんな作戦はどうでしょうか?』
電話越しに、名探偵であり、策士でもある彼女が妖しく笑った気がした。
そうして、直斗から案を授けられた瑞月は、きたる10月31日を迎えたのであった。