瀬名瑞月の恋人——花村陽介は、魅力的な人間だ。明るくて、場を盛り立てるコミュ力に長けていて、自身の負った役割には誠実。

　地雷を踏む迂闊さや、むこうみずで突飛な行動力はたまに傷ではある。しかし、そんなハンデがあっても周りに人が集まる事実が、彼が人を引き寄せる魅力的な人物である証左に他ならないだろう。

　良いことではあるが、悪いことでもある。人と接する機会が多ければ、厄介事に巻き込まれる機会も多くなるからだ。陽介は運が悪いので、なおさら。

　かくして、先週まで陽介は、厄介事を負っていた。大学の学園祭の実行委員という大役を。陽介はハチャメチャに頑張った。バイトに、学校の課題と、切羽詰まる怒涛のスケジュールをすべてこなし、その役割を全うした。

　大学が違う瑞月は、深いかかわりはできない。
　したがって、陽介の健康管理————衣食住の整備と、息抜きの会話相手、疲労困憊した陽介への添い寝——に注力した。忙しくなると、陽介はとにかく自分を蔑ろにする悪癖があるゆえに。

　そうして、自身の身を挺して頑張る陽介を傍で見守り続けていたら、瑞月はふとある欲求を覚えたのだ。

　「疲れた陽介をひたすらに甘やかして、癒したい」と。