エピローグ
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翌朝。ベッドサイドに腰かけた瑞月は、丈の大きいパジャマに袖を通していた。男性用なので、瑞月が着るとブカブカだ。
余った袖を汚さないように気を付けて、瑞月は両手で抱えたマグカップを口元に持っていく。中身のカフェオレは無糖かつミルク多め——瑞月好みの味付けで、疲れた体にありがたい。
瑞月がカフェオレを飲み終えたタイミングで、バタンとベットルームのドアが開かれた。エプロンを身に着けた彼——陽介がヒョイッと顔を出す。
動きはいつも以上に軽やかで、肌もツヤツヤピカピカだ。働きづめの疲れはどこへやら、見るからにベストコンディションである。
陽介は明るく笑いながら、瑞月の下へ向かってくる。エプロンの裾が羽根のごとくヒラヒラと舞った。
「瑞月ー! 洗濯終わったぞー」
体力を消耗した瑞月が眠っているうちに、陽介はいろいろと始末をつけてくれたらしい。中身が空になったマグを、瑞月はヘッドボードに置く。このカフェオレも陽介が用意してくれたものだ。
ぐちゃぐちゃになったナース衣装は早々に洗濯機に突っ込まれて、瑞月は陽介のパジャマを着せられていた。彼パジャマである。陽介の匂いがする衣類に緩みそうになる頬を抑えて、瑞月は感謝の笑顔を作る。
「陽介、ありがとう。おまえさまは優しいな。そしてすまない。後始末と家事を押し付けてしまって……」
「どってことないけど? チョッパヤで片付けてきたし——」
どこか浮き立った様子で、陽介は瑞月の隣に腰かけた。流れるように、瑞月を両腕で引き寄せる。陽介の高い平熱が、起きぬけで冷たい瑞月を温めていく。
寝ぐせでもつれた瑞月の黒髪を梳きながら、陽介は弾んだ声で瑞月へと囁きかけた。
「これで瑞月のこと、思いっきり甘やかせるな」
「な……な……!」
盛大に肩を跳ねさせたにも関わらず、陽介は瑞月の身体をしっかりと抱き込んだ。人懐こい大型犬のように、陽介はすりすりと瑞月にじゃれつく。大好きな人の心音と匂いと体温に包まれて、瑞月はぱくぱくと酸素に喘いだ。
「あー、照れた瑞月かわいー。柔らかいし離れたくねー……。よし、今日は家でとことんくっついてよーぜ。気になってた映画あったろ? あれ今サブスクで見れるって」
「ひ、ひえ」
「ゲームもいいな。最近全然遊んでなかったし……でも、案外このままっていうのも悪くないよな。なぁ、瑞月。瑞月はどれがいい?」
「よよよ、ようすけ……」
「ん、どした瑞月? いきなりクマ吉みたいになって」
「にゃ、にゃんで ひょんなに、わたひを だきひめて くれゆ?」
真正面から陽介を浴びすぎて、瑞月の活舌が死んだ。恥を晒した瑞月は、両手で真っ赤になった顔を覆い隠す。しかし、瑞月、と名前を呼ばれ、優しく覆いを外されてしまった。
陽介は赤らんだ瑞月を、揶揄うことなくひたむきに見つめている。甘く垂れたヘーゼルの瞳に真摯な光を射し、柔らかく弧を描いた唇で陽介が答えた。
「瑞月が昨日、俺のためにがんばってくれたから。それに——」
陽介は言い淀む。相当な羞恥に駆られているのだろう。目線を横にずらして、紅潮した頬を片手で覆いながらも、それでも陽介は言い切った。
「……離れたく、ないし」
—— すえながく、そばに、いさせてくださいね……?
それは昨日、瑞月が告げた言葉に対する返答だった。眠りの縁にいた瑞月は覚えているかは分からない。
けれど、瑞月に言い逃げさせるつもりなど陽介にはなかった。大好きな人を想う気持ちは、いつだってちゃんと伝えたい。
ぼぼぼぼぼぼっと、陽介の腕の中が急激に温かくなる。瑞月が顔面から蒸気を吹き出した。
「わ、わたひも」
極度に照れながらも、瑞月は陽介の言葉に答えてくれた。喜びが花火みたいにはじけて、陽介は思わず瑞月と唇を重ねる。
昨日、瑞月は陽介のために身を挺して頑張ってくれた。きっと相当身体も疲れているだろう。だから、陽介は彼女のそばにいて、思いっきり甘やかして瑞月を癒したい。
乱れた瑞月の黒髪に陽介は手を伸ばす。瑞月の視界にこぼれ落ちた黒髪をさらりと耳にかけてやると、瑞月はおずおずと口を開いた。
「……陽介」
「ん?」
「だいすき」
「……うん。俺も、大好き」
余った袖を汚さないように気を付けて、瑞月は両手で抱えたマグカップを口元に持っていく。中身のカフェオレは無糖かつミルク多め——瑞月好みの味付けで、疲れた体にありがたい。
瑞月がカフェオレを飲み終えたタイミングで、バタンとベットルームのドアが開かれた。エプロンを身に着けた彼——陽介がヒョイッと顔を出す。
動きはいつも以上に軽やかで、肌もツヤツヤピカピカだ。働きづめの疲れはどこへやら、見るからにベストコンディションである。
陽介は明るく笑いながら、瑞月の下へ向かってくる。エプロンの裾が羽根のごとくヒラヒラと舞った。
「瑞月ー! 洗濯終わったぞー」
体力を消耗した瑞月が眠っているうちに、陽介はいろいろと始末をつけてくれたらしい。中身が空になったマグを、瑞月はヘッドボードに置く。このカフェオレも陽介が用意してくれたものだ。
ぐちゃぐちゃになったナース衣装は早々に洗濯機に突っ込まれて、瑞月は陽介のパジャマを着せられていた。彼パジャマである。陽介の匂いがする衣類に緩みそうになる頬を抑えて、瑞月は感謝の笑顔を作る。
「陽介、ありがとう。おまえさまは優しいな。そしてすまない。後始末と家事を押し付けてしまって……」
「どってことないけど? チョッパヤで片付けてきたし——」
どこか浮き立った様子で、陽介は瑞月の隣に腰かけた。流れるように、瑞月を両腕で引き寄せる。陽介の高い平熱が、起きぬけで冷たい瑞月を温めていく。
寝ぐせでもつれた瑞月の黒髪を梳きながら、陽介は弾んだ声で瑞月へと囁きかけた。
「これで瑞月のこと、思いっきり甘やかせるな」
「な……な……!」
盛大に肩を跳ねさせたにも関わらず、陽介は瑞月の身体をしっかりと抱き込んだ。人懐こい大型犬のように、陽介はすりすりと瑞月にじゃれつく。大好きな人の心音と匂いと体温に包まれて、瑞月はぱくぱくと酸素に喘いだ。
「あー、照れた瑞月かわいー。柔らかいし離れたくねー……。よし、今日は家でとことんくっついてよーぜ。気になってた映画あったろ? あれ今サブスクで見れるって」
「ひ、ひえ」
「ゲームもいいな。最近全然遊んでなかったし……でも、案外このままっていうのも悪くないよな。なぁ、瑞月。瑞月はどれがいい?」
「よよよ、ようすけ……」
「ん、どした瑞月? いきなりクマ吉みたいになって」
「にゃ、にゃんで ひょんなに、わたひを だきひめて くれゆ?」
真正面から陽介を浴びすぎて、瑞月の活舌が死んだ。恥を晒した瑞月は、両手で真っ赤になった顔を覆い隠す。しかし、瑞月、と名前を呼ばれ、優しく覆いを外されてしまった。
陽介は赤らんだ瑞月を、揶揄うことなくひたむきに見つめている。甘く垂れたヘーゼルの瞳に真摯な光を射し、柔らかく弧を描いた唇で陽介が答えた。
「瑞月が昨日、俺のためにがんばってくれたから。それに——」
陽介は言い淀む。相当な羞恥に駆られているのだろう。目線を横にずらして、紅潮した頬を片手で覆いながらも、それでも陽介は言い切った。
「……離れたく、ないし」
—— すえながく、そばに、いさせてくださいね……?
それは昨日、瑞月が告げた言葉に対する返答だった。眠りの縁にいた瑞月は覚えているかは分からない。
けれど、瑞月に言い逃げさせるつもりなど陽介にはなかった。大好きな人を想う気持ちは、いつだってちゃんと伝えたい。
ぼぼぼぼぼぼっと、陽介の腕の中が急激に温かくなる。瑞月が顔面から蒸気を吹き出した。
「わ、わたひも」
極度に照れながらも、瑞月は陽介の言葉に答えてくれた。喜びが花火みたいにはじけて、陽介は思わず瑞月と唇を重ねる。
昨日、瑞月は陽介のために身を挺して頑張ってくれた。きっと相当身体も疲れているだろう。だから、陽介は彼女のそばにいて、思いっきり甘やかして瑞月を癒したい。
乱れた瑞月の黒髪に陽介は手を伸ばす。瑞月の視界にこぼれ落ちた黒髪をさらりと耳にかけてやると、瑞月はおずおずと口を開いた。
「……陽介」
「ん?」
「だいすき」
「……うん。俺も、大好き」
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