こぼれ桜
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陽介が瑞月の肩に手を添える。陽介の吐息が唇に触れて、瑞月は目を閉じた。唇に柔らかな感触を受けて、それは頬へ、鼻先へ、額へ、瞼へ次々と移動する。まるで桜の雨の中にいるようだと、瑞月は思う。
陽介の中で育まれた愛情のひとひらがハラㇼハラリと瑞月を撫でていく、そんな口づけだ。
けれど、もっと情熱的なものが欲しい。例えるなら、開花する瞬間のような蕾を打ち破る強かな口づけが。焦れた瑞月が陽介の首筋に両腕を回す。すると唇にあの感触が戻ってきた。
濡れた温かな舌で唇を撫でられて、瑞月は素直に陽介を受け入れる。
「ふ……んむ……んちゅ……ん、んん!」
「……ふっ、うん……はぁ……」
望みどおりに、陽介は瑞月の口腔を暴れまわった。上あごを、舌の裏側を、這いまわり、瑞月の小さな舌を絡めとる。あまりにも激しい舌のまぐわいが、酸素不足の互いの脳に快感を流入させる。思考が熱に浮かされていく。
長く絡み合ったというのに、名残惜しそうに離れた舌を銀の糸がつないでいた。
「は……瑞月の唇うめぇ、ずっと舐めてたい」
「私は、砂糖菓子か、何かか」
「砂糖だったら、溶けちまうだろ」
息も絶え絶えに応える瑞月の身体が溶けていないか確かめているのか、陽介が強く抱きしめる。
彼は瑞月を抱き込んだままで、体を布団へ投げ出した。
「わっ」
陽介が下じきになってくれたおかげで、瑞月はそれほど衝撃を感じなかった。ぎこちない陽介の手が、瑞月を慎重に白雪の褥へ横たえる。まるで、壊れ物のように。陽介の優しさと、頭と背中に伝わってくる手のひらの温度。どちらにしろ、瑞月の目の奥が勝手に熱くなっていく。陽介はとても温かい。
浴衣を脱がされる前に、瑞月は陽介の手を取って、浴衣をまとめる帯の結び目へと導いた。陽介の手は、どくどくと脈打っている。
「さっき、陽介が下着を選んでくれて嬉しかった」
「え?」
「ふふ、見てからのお楽しみだ」
意味深に微笑む瑞月に、陽介が一瞬ぽかんと口を開ける。彼が意を決してしゅるり、と帯をほどくと瑞月を覆う浴衣が形を崩した。
薄布のあわいから露になったのは、暗闇の中でも鮮やかなオレンジ色――陽介の、好きな色。瑞月を薄明りの下で見下ろす陽介にはその全貌が見えているはず。
花柄のレース生地が幾重にも重なった、繊細なオレンジのランジェリー。黒い茨がアクセントとなって、華やかながらも侵しがたい高貴な印象がある一着だ。
「これって……」
「……似合わない、だろうか」
今さらながら、瑞月は不安を覚えた。自身が気に入ったランジェリーでも、陽介はそうではないのでは、と。羞恥と後悔が込み上げてくる。陽介の顔を直視できず、瑞月は瞳を掌で覆い隠そうとした。
「瑞月」
その両手を陽介が押しとどめる。潤む瞳の中でも、陽介の甘く垂れたヘーゼルの瞳の端は朱に染まってよく分かった。けれどすぐに抱きしめられてしまったから、陽介がどんな表情をしているのか、分からなかった。ただ、瑞月の上に重なった心臓がものすごい速さで拍動している。
「すっげーキレー、ホントにコレ、脱がさないとダメ?」
「……下着なのだから、脱がせてくれないと先に進めないだろう。まさか中座してくれるなよ」
「いや、そこはちゃんとスるんすけど、オンナノコの下着コエー。男のと全然違うわ」
「気に入ってもらえたようで、良かった。陽介が好きな色だったから……見てほしくて」
「ちょっとフルスロットル過ぎませんかね?瑞月さん、心臓に悪いんですが」
「散々待ったんだ。これくらいは言わせておくれ」
「……それはお待たせしました、お姫さま」
「ああ、存分に可愛がっておくれ」
陽介はキザなセリフを言ってのけるが、声が震えてしまっていて全然格好がついていない。
といっても、気取った言葉で返した自分の声も震えていたから、お相子だと瑞月は苦笑する。
向かい合わせで、2人は笑いあう。
陽介は、瑞月と長い時間を過ごした。
陽介の中で育まれた愛情のひとひらがハラㇼハラリと瑞月を撫でていく、そんな口づけだ。
けれど、もっと情熱的なものが欲しい。例えるなら、開花する瞬間のような蕾を打ち破る強かな口づけが。焦れた瑞月が陽介の首筋に両腕を回す。すると唇にあの感触が戻ってきた。
濡れた温かな舌で唇を撫でられて、瑞月は素直に陽介を受け入れる。
「ふ……んむ……んちゅ……ん、んん!」
「……ふっ、うん……はぁ……」
望みどおりに、陽介は瑞月の口腔を暴れまわった。上あごを、舌の裏側を、這いまわり、瑞月の小さな舌を絡めとる。あまりにも激しい舌のまぐわいが、酸素不足の互いの脳に快感を流入させる。思考が熱に浮かされていく。
長く絡み合ったというのに、名残惜しそうに離れた舌を銀の糸がつないでいた。
「は……瑞月の唇うめぇ、ずっと舐めてたい」
「私は、砂糖菓子か、何かか」
「砂糖だったら、溶けちまうだろ」
息も絶え絶えに応える瑞月の身体が溶けていないか確かめているのか、陽介が強く抱きしめる。
彼は瑞月を抱き込んだままで、体を布団へ投げ出した。
「わっ」
陽介が下じきになってくれたおかげで、瑞月はそれほど衝撃を感じなかった。ぎこちない陽介の手が、瑞月を慎重に白雪の褥へ横たえる。まるで、壊れ物のように。陽介の優しさと、頭と背中に伝わってくる手のひらの温度。どちらにしろ、瑞月の目の奥が勝手に熱くなっていく。陽介はとても温かい。
浴衣を脱がされる前に、瑞月は陽介の手を取って、浴衣をまとめる帯の結び目へと導いた。陽介の手は、どくどくと脈打っている。
「さっき、陽介が下着を選んでくれて嬉しかった」
「え?」
「ふふ、見てからのお楽しみだ」
意味深に微笑む瑞月に、陽介が一瞬ぽかんと口を開ける。彼が意を決してしゅるり、と帯をほどくと瑞月を覆う浴衣が形を崩した。
薄布のあわいから露になったのは、暗闇の中でも鮮やかなオレンジ色――陽介の、好きな色。瑞月を薄明りの下で見下ろす陽介にはその全貌が見えているはず。
花柄のレース生地が幾重にも重なった、繊細なオレンジのランジェリー。黒い茨がアクセントとなって、華やかながらも侵しがたい高貴な印象がある一着だ。
「これって……」
「……似合わない、だろうか」
今さらながら、瑞月は不安を覚えた。自身が気に入ったランジェリーでも、陽介はそうではないのでは、と。羞恥と後悔が込み上げてくる。陽介の顔を直視できず、瑞月は瞳を掌で覆い隠そうとした。
「瑞月」
その両手を陽介が押しとどめる。潤む瞳の中でも、陽介の甘く垂れたヘーゼルの瞳の端は朱に染まってよく分かった。けれどすぐに抱きしめられてしまったから、陽介がどんな表情をしているのか、分からなかった。ただ、瑞月の上に重なった心臓がものすごい速さで拍動している。
「すっげーキレー、ホントにコレ、脱がさないとダメ?」
「……下着なのだから、脱がせてくれないと先に進めないだろう。まさか中座してくれるなよ」
「いや、そこはちゃんとスるんすけど、オンナノコの下着コエー。男のと全然違うわ」
「気に入ってもらえたようで、良かった。陽介が好きな色だったから……見てほしくて」
「ちょっとフルスロットル過ぎませんかね?瑞月さん、心臓に悪いんですが」
「散々待ったんだ。これくらいは言わせておくれ」
「……それはお待たせしました、お姫さま」
「ああ、存分に可愛がっておくれ」
陽介はキザなセリフを言ってのけるが、声が震えてしまっていて全然格好がついていない。
といっても、気取った言葉で返した自分の声も震えていたから、お相子だと瑞月は苦笑する。
向かい合わせで、2人は笑いあう。
陽介は、瑞月と長い時間を過ごした。