寒桜
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急に、陽介の視界が広がった。いや、陽介自身が狭めていたのかもしれない。男の意地や不安にしがみついて、自分自身しか見えなくなっていた。
けれど、今からすることは、瑞月と一緒でなくてはできない。陽介だけでは、できないことなのだ。
陽介はしゃんと背筋を正す。正座した膝の前に丁寧に両手を置いた。瑞月が驚きに目を開きながらも、彼女も陽介と膝を突き合わせる。
「瀬名瑞月さん」
「はい、おまえさま」
「お前を、抱かせてください」
そのまま、陽介は深々と布団に頭をつけた。瑞月が、小さく身体を跳ねさせた気配がする。それでも、彼女は静かに陽介の言葉を待っていた。
「お前は俺と出会ってくれたことを幸福だって言ってくれた。けど、俺はお前とちゃんと──恋人として、掛け替えのないパートナーとして、お前とこの先を生きていきたい」
そこで、ようやっと、陽介は顔を上げた。瑞月は真剣な面差しで陽介と向き合っている。桜を閉じ込めた紺碧の瞳のままで。
「だから、今日、ちゃんと恋人同士になろうぜ。別に、いままでがそうじゃなかったってわけじゃないけど……。俺が、お前のものになりたくて、だから、その、お前と……したい」
「……」
無言のまま、瑞月と陽介は顔を突き合わせる。だんだんと、陽介はいたたまれなさと羞恥で顔がほてる。逃げ道を塞ぐべく、強い言葉を使ったつもりだ。しかし思い返せばかなり品がない誘い文句である。
(したいとか、抱きたいとか、直球すぎんだろ。もしかして、引いた!?引かれたよな……)
後ろを振り返ろうと動いた陽介の両肩を、ぐっと強い力で押さえられた。
「おまえさま、陽介」
瑞月が肩を引き留めた手のひとつを、陽介の頬へと添えた。瑞月は陽介の瞳の奥を覗き込みながら、まるで刻み込むかのように陽介の問いに答える。
「私も、ずっと陽介のものにしてほしいと願っておりました」
「不束者ではありますが、どうぞよろしくお願いします」
ほころびたての桜のように、瑞月は頬を染めて微笑んだ。
『必ず私は、陽介に操をささげるから』
いつかの彼女の誓いが、陽介の脳裏を過ぎる。
いつかと言ってしまえるほどの、長い時間が流れていたのだと、陽介は今さら気がついた。
けれど、今からすることは、瑞月と一緒でなくてはできない。陽介だけでは、できないことなのだ。
陽介はしゃんと背筋を正す。正座した膝の前に丁寧に両手を置いた。瑞月が驚きに目を開きながらも、彼女も陽介と膝を突き合わせる。
「瀬名瑞月さん」
「はい、おまえさま」
「お前を、抱かせてください」
そのまま、陽介は深々と布団に頭をつけた。瑞月が、小さく身体を跳ねさせた気配がする。それでも、彼女は静かに陽介の言葉を待っていた。
「お前は俺と出会ってくれたことを幸福だって言ってくれた。けど、俺はお前とちゃんと──恋人として、掛け替えのないパートナーとして、お前とこの先を生きていきたい」
そこで、ようやっと、陽介は顔を上げた。瑞月は真剣な面差しで陽介と向き合っている。桜を閉じ込めた紺碧の瞳のままで。
「だから、今日、ちゃんと恋人同士になろうぜ。別に、いままでがそうじゃなかったってわけじゃないけど……。俺が、お前のものになりたくて、だから、その、お前と……したい」
「……」
無言のまま、瑞月と陽介は顔を突き合わせる。だんだんと、陽介はいたたまれなさと羞恥で顔がほてる。逃げ道を塞ぐべく、強い言葉を使ったつもりだ。しかし思い返せばかなり品がない誘い文句である。
(したいとか、抱きたいとか、直球すぎんだろ。もしかして、引いた!?引かれたよな……)
後ろを振り返ろうと動いた陽介の両肩を、ぐっと強い力で押さえられた。
「おまえさま、陽介」
瑞月が肩を引き留めた手のひとつを、陽介の頬へと添えた。瑞月は陽介の瞳の奥を覗き込みながら、まるで刻み込むかのように陽介の問いに答える。
「私も、ずっと陽介のものにしてほしいと願っておりました」
「不束者ではありますが、どうぞよろしくお願いします」
ほころびたての桜のように、瑞月は頬を染めて微笑んだ。
『必ず私は、陽介に操をささげるから』
いつかの彼女の誓いが、陽介の脳裏を過ぎる。
いつかと言ってしまえるほどの、長い時間が流れていたのだと、陽介は今さら気がついた。