寒桜
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旅行の事情や2人の懐具合を考えて、そういうホテルを選んだ。といっても、高2の修学旅行で止まった宿と比べると雲泥の差だ。
ゆったりと時間を過ごすコンセプトで作られたのか、和風の内装は品の好い旅館と相違ない。
陽介は緊張で、チェックインの前の夕食はまともに取れなかった。いや、表面上はきちんと平らげたのではあるが、味を全くと言っていいほど覚えていないのである。
経験のある人間からすれば、緊張しすぎと笑われるかもしれないが、陽介は未経験であった。その上に相手である瑞月は、同じく未経験である。
男としての矜持やら、初体験への不安と興奮やらが、陽介の背中に重くのしかかっている。潰されないように、陽介は必死で膝の上の拳を握り締めているのだ。
(いやいや落ち着け俺、俺男だぞ。瑞月をリードしなきゃいけないんだかんな。精神を集中しろコンセントレイトだ俺のペルソナ使えないけどってダメじゃんいやとにかく落ち着け)
思考が堂々巡りする思考を落ちつけるために、陽介は深呼吸しようと息を吸った。すると、喉の違和感に気がつく。
「あ……」
漏れ出た声は掠れていた。緊張で汗にとられたのか、カラカラに乾いていて痛いくらいに。体感覚を実感して、自分の心境を客観視すると、陽介は少しだけ落ち着きを取り戻す。
「水、飲むか……」
陽介は身体の硬直を解いて、よろよろと備え付けの冷蔵庫のドアを開いた。中にはミネラルウォーターが入っている。火照った身体に冷えた感触が心地よい。陽介は布団に戻り、蓋を開けてペットボトルに口を付けようとする。
「……陽介」
「ハッ、ハイ!?どした!?」
唐突に名を呼ばれ、陽介はペットボトルを取り落としそうになる。瑞月だ。きっと入浴を終えたのであろう彼女は、くすくすと小さな笑いをこぼす。
「陽介、声が裏返っている」
「い、いきなり話しかけられてびっくりしたんだよ」
「さっきまで話していたというのに。ふふっ、不思議なものだ」
風鈴の笑い声が聞こえる。清水のように透き通った瑞月の声は自然と陽介の心も鎮めてしまうのだから、そちらの方が不思議なものだ。
おかげで陽介の身体もすこしほぐれたようだ。言いながら、掠れた自身の声は良いものではないなと、陽介はミネラルウォーターを1口含む。
「で、どした?なんかあったのか」
「……その、浴衣のままか、下着を着けた状態か、おまえさまはどちらが好みだ」
「ブハッ」
前言撤回。清水のような声音で瑞月はとんでもない相談を口走った。心頭滅却を試みていたというのに、瑞月のあられもない姿が脳内を横切る。
2口目に含んだミネラルウォーターを陽介は吹き出した。なんとか布団にかけなかったささやかな努力を誰か褒めてほしい。
「おまえさま!?どうした!」
「お前なんてカッコしてんだ!?」
「?……あっ」
異変を察知した瑞月が浴室から心配そうに顔だけを出した。といっても、ある程度の部分は見えてしまうわけで。
湯上りのせいか、瑞月の雪の肌が薄く色づいている。白鷺のように細い首筋から湯気が立ちのぼった。湿気に濡れた黒髪は指通りのよさそうな細い束になって瑞月の肌に絡みつく。
湯上りに色づいたあまりにも魅力的なバストアップ。
図らずとも、混乱の爆発に油を注がれた陽介は思わず眼を逸らし、瑞月はさらにのぼせ上ってすぐさま顔を引っ込める。
「いや、こちらこそすまない。見苦しいものを見せた。大事ないか……」
「俺の方もごめん。びっくりして気道で水飲んだだけだし……持ち直したから。いきなし怒鳴って悪かったな……」
「それで……改めて聞きたい。私は下着をつけた方が良いのだろうか」
「やっぱ訊きますか、それ……えーーーーと……」
そもそもなぜ、瑞月は陽介に下着の着用を尋ねるのだろうか。陽介自身はどちらでも構わないのだが、やたらと瑞月は下着を推している気がする。うーーーーんと、あごに手を当てて陽介は熟考する。
散々迷ったあげく、陽介は下着を選択した。
ゆったりと時間を過ごすコンセプトで作られたのか、和風の内装は品の好い旅館と相違ない。
陽介は緊張で、チェックインの前の夕食はまともに取れなかった。いや、表面上はきちんと平らげたのではあるが、味を全くと言っていいほど覚えていないのである。
経験のある人間からすれば、緊張しすぎと笑われるかもしれないが、陽介は未経験であった。その上に相手である瑞月は、同じく未経験である。
男としての矜持やら、初体験への不安と興奮やらが、陽介の背中に重くのしかかっている。潰されないように、陽介は必死で膝の上の拳を握り締めているのだ。
(いやいや落ち着け俺、俺男だぞ。瑞月をリードしなきゃいけないんだかんな。精神を集中しろコンセントレイトだ俺のペルソナ使えないけどってダメじゃんいやとにかく落ち着け)
思考が堂々巡りする思考を落ちつけるために、陽介は深呼吸しようと息を吸った。すると、喉の違和感に気がつく。
「あ……」
漏れ出た声は掠れていた。緊張で汗にとられたのか、カラカラに乾いていて痛いくらいに。体感覚を実感して、自分の心境を客観視すると、陽介は少しだけ落ち着きを取り戻す。
「水、飲むか……」
陽介は身体の硬直を解いて、よろよろと備え付けの冷蔵庫のドアを開いた。中にはミネラルウォーターが入っている。火照った身体に冷えた感触が心地よい。陽介は布団に戻り、蓋を開けてペットボトルに口を付けようとする。
「……陽介」
「ハッ、ハイ!?どした!?」
唐突に名を呼ばれ、陽介はペットボトルを取り落としそうになる。瑞月だ。きっと入浴を終えたのであろう彼女は、くすくすと小さな笑いをこぼす。
「陽介、声が裏返っている」
「い、いきなり話しかけられてびっくりしたんだよ」
「さっきまで話していたというのに。ふふっ、不思議なものだ」
風鈴の笑い声が聞こえる。清水のように透き通った瑞月の声は自然と陽介の心も鎮めてしまうのだから、そちらの方が不思議なものだ。
おかげで陽介の身体もすこしほぐれたようだ。言いながら、掠れた自身の声は良いものではないなと、陽介はミネラルウォーターを1口含む。
「で、どした?なんかあったのか」
「……その、浴衣のままか、下着を着けた状態か、おまえさまはどちらが好みだ」
「ブハッ」
前言撤回。清水のような声音で瑞月はとんでもない相談を口走った。心頭滅却を試みていたというのに、瑞月のあられもない姿が脳内を横切る。
2口目に含んだミネラルウォーターを陽介は吹き出した。なんとか布団にかけなかったささやかな努力を誰か褒めてほしい。
「おまえさま!?どうした!」
「お前なんてカッコしてんだ!?」
「?……あっ」
異変を察知した瑞月が浴室から心配そうに顔だけを出した。といっても、ある程度の部分は見えてしまうわけで。
湯上りのせいか、瑞月の雪の肌が薄く色づいている。白鷺のように細い首筋から湯気が立ちのぼった。湿気に濡れた黒髪は指通りのよさそうな細い束になって瑞月の肌に絡みつく。
湯上りに色づいたあまりにも魅力的なバストアップ。
図らずとも、混乱の爆発に油を注がれた陽介は思わず眼を逸らし、瑞月はさらにのぼせ上ってすぐさま顔を引っ込める。
「いや、こちらこそすまない。見苦しいものを見せた。大事ないか……」
「俺の方もごめん。びっくりして気道で水飲んだだけだし……持ち直したから。いきなし怒鳴って悪かったな……」
「それで……改めて聞きたい。私は下着をつけた方が良いのだろうか」
「やっぱ訊きますか、それ……えーーーーと……」
そもそもなぜ、瑞月は陽介に下着の着用を尋ねるのだろうか。陽介自身はどちらでも構わないのだが、やたらと瑞月は下着を推している気がする。うーーーーんと、あごに手を当てて陽介は熟考する。
散々迷ったあげく、陽介は下着を選択した。