今は、桜の季節であった。陽介は瑞月と出会って、３度目の春を迎えようとしている。そんなにも長い時間を、陽介は瑞月と過ごしてきたのだ。

　そうして、これからも過ごしていく。

　リングは証であり、鎖だ。また、新しい誓いでもあった。これからも、陽介は瑞月と過ごしてゆく。途方もない時間の中で、様々な想いに溢れた記憶たちが、桜のように咲いて、舞い落ちて、降り積もってゆくのだろう。

　過去に、現在に、未来にあるひとひらを、瑞月と共に、少しでも多く瞳の中に納めていきたいと、陽介は願う。そんな願いを叶えるための誓いだ。

　春は終わりと始まりの季節。新しい誓いを立てるにはちょうどいい。

　今日の天気は晴れだという。外では、紺碧の空を背にして、桜が咲いていることだろう。日の光をはじいて落ちる、花の吹雪はきっときれいだ。

その日、桜並木の下で噛みまくった恋人の告白に、感極まって泣きじゃくりながら頷いた女性がいたという。