桜の花が咲く頃に
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ボストンバックを漁った陽介はシャワーを浴びた後、私服に着替えた。
未開封のペットボトルとあるものを携えて、未だ寝ている瑞月のもとに戻る。
瑞月はいまだ眠っていた。瑞月の頬を陽介は手の項で撫でる。
「よく寝てんな……。ま、昨日無理させちまったから当然か」
「……んぅ……」
体温を感知したのだろうか。陽介の手に瑞月がすり寄る。まるで子猫のような仕草に、陽介の頬が緩んだ。ひとしきり気が済んだところで、もう片方の手から陽介はあるものを取り出す。陽介は瑞月の右手を取って————瑞月の瞼が開いた。
「ん?」
「へ?」
陽介が握る右手に、ゆるみ切っていた瞳孔が急速に絞られる。
白雪の肌に桜が咲いた。対する陽介は顔を青く引きつらせる。花冷えに中てられたかと思うほどに。
「え、ようすけ、これは」
「………………え……とな、これは……ポ〇コ」
「ポ〇コ」
瑞月が宇宙を背負った。彼女はガバリと布団から起き上がる。
「いや、お前起きれたの!?疲れとか、イロイロあんだろッ?」
「それは今重要ではない、ケホッ」
「気にして!?喉かわいてんじゃねぇかっ。お前は自分の身体大切にして!?」
「おお、ありがとう」
陽介はペットボトルを差し出した。蓋はすでに開封済みだ。ペットボトルの中身を飲みながら、瑞月は右手薬指を検分する。
「スナックにしてはハードではないか?質感が金属なのだが、おまえさま」
「ウソです。ペアリングです……サイズ確かめたくて、寝てるお前につけました」
陽介は観念した。瑞月の右手薬指にはクロスリングがはまっている。ローズゴールドとシルバーの対比が華やかな逸品だ。瑞月は知らないが、裏側に刻字も施してある。
「ホントは、今日の帰りに渡そうと思ってたんだけど……はは、思いっきり……見られちまったな」
だんだんと苦笑いが小さくなっていく。サプライズで渡そうと考えていたのだが、本当に運がない。よりにもよって、ラブなホテルで指輪を渡す恋人がいるだろうか。
満足に贈り物もできない自分に瞼を伏せて、陽介はため息がこぼしそうになった、その瞬間。
瑞月がリングに口づけた。
「素敵な指輪だ。光が反射すると橙に輝いて、おまえさまを思い出せる」
いつの間にか、ペットボトルは布団の外に追いやられたらしい。ささやかなリップ音の後、瑞月は陽介が嵌めたリングを眼前に掲げる。半ば伏せられた瞼から覗く眼差しは、蜜のように甘い。
陽介は、心臓を射られた。
普段使いを重視するならば、選ぶべきはシルバーなどの単色リングだろう。それでも、陽介は2色のクロスリングを取った。
なぜなら、橙の光を放つローズゴールドと対となるリング。その色が、瑞月の瞳に似たブルーであったから。
つまり、恋人を想起させる色のリングを陽介は身に着けていたかったし、瑞月にも身に着けて欲しかったのだ。
陽介は瑞月のもので、瑞月は陽介のもの。
ロマンチックというか、我ながらクサい考え。なんとも稚拙な独占欲。
けれども、どうしても、陽介と瑞月の関係を目で見える形で表しておきたかった。
言ってしまえば、リングは証であり、鎖だ。お互いがお互いの「特別」である証であり、互いを縛る、束縛の鎖。
しかし、瑞月はそれを許した。許すどころか、口づけによって祝福する。
未開封のペットボトルとあるものを携えて、未だ寝ている瑞月のもとに戻る。
瑞月はいまだ眠っていた。瑞月の頬を陽介は手の項で撫でる。
「よく寝てんな……。ま、昨日無理させちまったから当然か」
「……んぅ……」
体温を感知したのだろうか。陽介の手に瑞月がすり寄る。まるで子猫のような仕草に、陽介の頬が緩んだ。ひとしきり気が済んだところで、もう片方の手から陽介はあるものを取り出す。陽介は瑞月の右手を取って————瑞月の瞼が開いた。
「ん?」
「へ?」
陽介が握る右手に、ゆるみ切っていた瞳孔が急速に絞られる。
白雪の肌に桜が咲いた。対する陽介は顔を青く引きつらせる。花冷えに中てられたかと思うほどに。
「え、ようすけ、これは」
「………………え……とな、これは……ポ〇コ」
「ポ〇コ」
瑞月が宇宙を背負った。彼女はガバリと布団から起き上がる。
「いや、お前起きれたの!?疲れとか、イロイロあんだろッ?」
「それは今重要ではない、ケホッ」
「気にして!?喉かわいてんじゃねぇかっ。お前は自分の身体大切にして!?」
「おお、ありがとう」
陽介はペットボトルを差し出した。蓋はすでに開封済みだ。ペットボトルの中身を飲みながら、瑞月は右手薬指を検分する。
「スナックにしてはハードではないか?質感が金属なのだが、おまえさま」
「ウソです。ペアリングです……サイズ確かめたくて、寝てるお前につけました」
陽介は観念した。瑞月の右手薬指にはクロスリングがはまっている。ローズゴールドとシルバーの対比が華やかな逸品だ。瑞月は知らないが、裏側に刻字も施してある。
「ホントは、今日の帰りに渡そうと思ってたんだけど……はは、思いっきり……見られちまったな」
だんだんと苦笑いが小さくなっていく。サプライズで渡そうと考えていたのだが、本当に運がない。よりにもよって、ラブなホテルで指輪を渡す恋人がいるだろうか。
満足に贈り物もできない自分に瞼を伏せて、陽介はため息がこぼしそうになった、その瞬間。
瑞月がリングに口づけた。
「素敵な指輪だ。光が反射すると橙に輝いて、おまえさまを思い出せる」
いつの間にか、ペットボトルは布団の外に追いやられたらしい。ささやかなリップ音の後、瑞月は陽介が嵌めたリングを眼前に掲げる。半ば伏せられた瞼から覗く眼差しは、蜜のように甘い。
陽介は、心臓を射られた。
普段使いを重視するならば、選ぶべきはシルバーなどの単色リングだろう。それでも、陽介は2色のクロスリングを取った。
なぜなら、橙の光を放つローズゴールドと対となるリング。その色が、瑞月の瞳に似たブルーであったから。
つまり、恋人を想起させる色のリングを陽介は身に着けていたかったし、瑞月にも身に着けて欲しかったのだ。
陽介は瑞月のもので、瑞月は陽介のもの。
ロマンチックというか、我ながらクサい考え。なんとも稚拙な独占欲。
けれども、どうしても、陽介と瑞月の関係を目で見える形で表しておきたかった。
言ってしまえば、リングは証であり、鎖だ。お互いがお互いの「特別」である証であり、互いを縛る、束縛の鎖。
しかし、瑞月はそれを許した。許すどころか、口づけによって祝福する。